西日本鉄道は19日、2014年度事業計画ならびに今後の成長戦略についての説明会を都内で実施した。成長戦略の要とされる「農業イノベーション ~西鉄の6次産業に向けた挑戦」の概要説明も行われた。

西日本鉄道は天神大牟田線をはじめとする鉄道事業、全国最大規模の車両(約2,900台)を保有するバス事業などを展開している

「6次産業」とは、ひとつの業者が生産(1次産業)・加工(2次産業)・販売(3次産業)を手がける業態。雇用確保や所得向上につながるとして、農林水産省も農山漁村の6次産業化を推進している。だが多くの農家にとって、6次産業に参入する上で、「ノウハウ・技術」「資金」「労働力」の不足が課題となっている。

西日本鉄道代表取締役社長、倉富純男氏はこの日の説明会にて、「6次産業への取組みを進めるにあたり、福岡で情報収集にあたったところ、農家の方々が口々に、『作ったはいいけれど、売り先がない』と話していました。販路の確保も大きなハードルとなっています」と述べた。これらの課題と向き合い、6次産業に向けた挑戦の第1歩とすべく、「縁線(えんせん)プロジェクト」と銘打ち、西鉄沿線の農産品で6次産業モデルを創出するプロジェクトを展開すると発表した。

それにしても、福岡県内を中心に鉄道事業・バス事業などを展開し、大手私鉄のひとつにも数えられる西鉄が、なぜ「農業」を成長戦略に位置づけ、6次産業に取り組むのか?

倉富氏はその理由を、「ひとつは西鉄沿線の活性化。鉄道・バスの利用者数減少という長年の課題があり、この傾向に歯止めをかけるためにも、ローカルエリアの活性化が不可欠です。もうひとつは、西鉄グループが有する流通・物流ネットワークの有効活用です」と説明した。同社は物流業において、海外24カ国・地域の92都市に事業所を展開(2014年3月末現在)しており、航空貨物(日本発航空輸出混載)部門でのシェアは第5位。このネットワークを活用することで、西鉄沿線で生産された農産品を国内・海外へスピーディに届けることが可能になるという。

「縁線プロジェクト」第1弾「あまおうプレミアムスパークリングワイン」も会場に

今年度の事業計画や6次産業への取組みについて説明した倉富純男氏

同社の取り組む「縁線プロジェクト」第1弾の商品が、JA柳川産あまおうを久留米のワイナリーで醸造した「あまおうプレミアムスパークリングワイン」だ。昨年、500本限定で販売されて好評を博し、今年は2,500本を製造。6月9日から販売開始される。販路も拡大され、関東・東海・関西の「成城石井」81店舗で販売されるほか、6月下旬には香港に輸出され、現地の店舗でも販売される。

「縁線プロジェクト」の商品は今後も増え、2015年にはもう1種類追加投入される予定。倉富氏は今後のビジョンとして、「地域の方々と一緒に作り上げた良質な農業製品を、我々の国際物流ネットワークに載せ、将来的には台湾・シンガポール・タイ・マレーシアなど海外に展開していきたい」と話していた。