――現場で共演してみた感想も聞かせてください

ナチュラルだなあと思いました。吉岡さん自身がとてもフラットで何事にも動じない方というか、もしかしてドキドキしているかもしれないし、いろんな感情があるとも思うのですが、あまりそれを見せずにそこにいらっしゃる。役者として変に作りすぎず、普通にいることが一番難しいと私は思っているので、ああ、すごいなと思いました。私は何か作ってしまったり、形式張るというか、余分なものを付けてしまいがちなんです。でも、吉岡さんは本当に普通でいらしたので、それがとても大きく見えました。

――織田の上司の特捜部副部長・鬼塚剛役の三浦友和さんとの共演シーンもたくさんありましたね

三浦さんは、すごくオーラのある方でした。また、とても色気があるというか、セクシーな方だと思いました。また、吉岡さんもそうですが、お二人とも余計なものがないというか、力の抜け方とかが素晴らしかったです。もう、私なんか足元にも及ばない感じでした。現場では、何度も繰り返し、テイクを撮っていただいたりして、ご迷惑をおかけしました。今回、普通にいるってことが一番難しいと改めて感じましたね。

――その「普通にいる」というのは、どういう状態の演技でしょうか?

目の動き方1つで、怒ったことがわかるような演技というか。舞台だと怒った表情の場合、大げさに見せなければいけない。私はそういうところに長くいたので、つい過剰にやってしまいがちなんです。でも、動かずにやることの大切さを実感しました。また、今回の現場は女子1人で、いろんな俳優さんと絡ませていただき、男の大きさも感じました。もし、男役時代にこの人たちと出会っていたら、男をもっと魅力的に演じられたのではないかと思ったりして。みなさん、人間が大きいなと感じました。

――女優に転身されて3年目に入りましたが、苦労した点などはありましたか?

私は、これまで男役として「男はこうでないといけない」という芝居づくりをしてきたので、最初はまず、それをどける作業が大変でした。自分が体や心も含めて女子だったんだと気づかせるリハビリ期間が必要だったので。スカートは1着も持っていなかったから、1年目はまずスカートの自分に慣れようとしました。ずっと20年くらいショートカットだった髪も伸ばし始め、女子の楽しみをようやく35歳から知った感じでした(苦笑)。当時は"女子1年生"とか「まだ初心者マークがついてます」と言っていたくらいですから。いろんな役をやってきて、それがようやく取れてきた感じがします。

――今はとても女性らしい柔和な印象を受けますが、元々はどういうタイプだったのですか?

実は、宝塚時代は女っぽいことで悩んでいたんです。男役だったので「女っぽいからもっと男っぽくしなさい」と言われたりもしていました。顔も女っぽいとか、甘いとか、キリっとしていないとよく言われたので、よけいに封印していたのかもしれないです。だから、あの時の自分をもう一回掘り起こし、普通でいいんだと解放した感じです。2年目で女子でいることが楽しくなり、3年目に入った今は、表現をどう柔らかくできるかってことが課題になっています。

――最後に、人生におけるこだわりのようなものががあったら教えて下さい

心に嘘がないように生きることですね。心が動かなかったことは絶対にしないと決めています。もちろん、全部を押し通すわけにはいかないし、大人になるにつれて、いろんなことを諦めたり我慢したりもするとは思いますが、諦める方向ではなく、どうしたら近づけるか、どうしたら違う方向へたどり着けるかを考えていきたい。昔はもっと不器用で、宝塚はこうあるべきとか、勝手に自分の看板を背負っていた気がします。いろんな重圧とかで、自分に蓋をしてしまい、心の本当の嘆きや叫び、喜びなどを忘れかけていた時期もありました。でも、今はそれらを忘れないことによって、心が笑顔でいられる気がします。やっと楽になったというか、「まあ、いいか」みたいなところを増やすことにしました。以前より素直に生きられるようになった気がします。