11人の大学生が取材を重ね、福島県いわき市の今と未来を描いたドキュメンタリー映画『いわきノート FUKUSHIMA VOICE』が、5月10日から東京・渋谷アップリンクで公開される。

映画『いわきノート FUKUSHIMA VOICE』

福島県の南部に位置し、福島第一原発の最寄りの都市でもあるいわき市は、かつて炭鉱でにぎわい、映画『フラガール』の舞台としても有名になった。東日本大震災で446人が犠牲となり、現在も福島第一原発の周辺町村から2万人以上の避難を受け入れている。

放射能、環境変化、風評被害など住民にさまざまなストレスが重くのしかかっている中、人々が集い、自らの震災の記憶や思いを語る場として、「未来会議inいわき」が開催されている。参加するのは、なめこ農家、子供を津波で失った漁師、いわきで子育てする母親たち、保育士、教師、高校生、サーファー、今なお仮設住宅で生活する人など職業や立場、年齢もさまざま。

映像では戸惑いながらも、前に進もうとしている人々の姿が、その対話によって浮き彫りになっていく。カメラを参加者に向けるインタビュアーは、筑波大学に在学する11人の学生。インタビュー、撮影、編集もすべて初めての経験だったが、「福島の人々の声を世界に」を合言葉に映画制作に挑み、のべ90時間にも及んだ撮影素材から、本作を完成させた。

■学生たちが集めた、いわきに住む人々の声(一部)

・「失ったものを惜しむのはそろそろ終わりにする時期。残されたものや新しく手に入ったものを数えれば、明日につながると思うのね」(仮設住宅住民ボランティア)

・「大学で友達になった子に出身を聞かれて福島だと答えると、たいてい『大丈夫?』と聞かれて複雑な気持ちになる。何とも言えないモヤモヤ感」(大学生)

・「事故後2週間の時点で保育園の再開を決めたのは、いわきを動けない人たちが居るから。その現実を私たちは受け止めなくてはならない」(保育園理事長)

・「ポジティブにポジティブにと自分を奮い立たせて過ごしてきたけれど、他人に指摘されて、不安の影を自分で押し殺していることに気づきました」(託児施設主宰)

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