2013年の11月10日、米ロサンゼルス「Legacy Effects」社を訪問時の様子

ですから、このような体制の中で、とりあえず作ってみせたいということがあり、今、1、2本企画としては考え始めています。ただ、先ほど木場社長がおっしゃっていたような権利問題から、今、個人の立場でお答えできないという部分があります。本当の言い方をすれば、例えば『ガンダム』であっても「おれだったらこういう作り方ができるぞ」と当然、少しは思います。じゃあ今の時期に『ガンダム』かとなれば、『ガンダム』は今、僕が知らない『ガンダム』がいっぱいありますので、そういうものに混ざりたくはありませんから、別のものでいきたいという部分もあります。では何なのかというところですが、勢いにまかせてしゃべると怒られますので、ここまでしかしゃべれないという僕の立場を本当にわかってください(笑)。どうしてこうなったのか、「Legacy Effects」の連中が、みんなこいつら(「オオカゼノオコルサマ」)の都合に合わせたからこうなっちゃったんだよ、という話です(笑)。本当は3月の末に発表する予定が、二カ月繰り上がればこうなるでしょう、ということ。以上です。

提携第一作は、アニメか実写か。富野監督「『アバター』くらいはいきたい」

――これまではアニメーションを手がけてきた富野監督ですが、新作のジャンルは"アニメ"か"実写"か、何か考えておられますでしょうか。

富野監督:思った以上に両者の提携話の進捗状況が早いために、本当に困ったことが起こっています。ということで、ひょっとしたら第一作目が2Dの手前、つまり単純に手書きのアニメのような企画を立ち上げるところから始める方が無難じゃないか、とも思っています。ただこれは"無難論"だけではなくて、「Legacy Effects」との提携をどうしていくかということは、後2、3年の時間をかけてやっていった方がいいとも思っています。そのため、この2、3年の時間を稼ぐためにも、とりあえず東京制作のアニメがまずあってもいい。その段階で彼ら(「Legacy Effects」)との中でのコラボレーションができるものを考えていきたいし、新しいタイトル……新しいタイトルでなくてもいいです。映画化できるようなものについて、検討していく時間を、ここ1、2年いただきたいと思っています。

実写が入ってこようがアニメであろうが、僕にとってはどちらでもいいし、企画論としては僕にとって境界線はありませんので、21世紀の中盤を飾る新しい映像コンテンツを新たに生み出せたらいいなと。そして、そういうことを考える足場というものを今回東京に手に入れることができました。さらに、ハリウッドに間違いなく"助っ人"がいるということがわかりましたので、新しいものを作っていきたい。妥当なタイトルを挙げておきます。打倒『アバター』くらいはいきたい!

――これまでの作品は、バンダイやサンライズと組んだ作品が多かったと思います。今回のタイトルがどうなるかはわかりませんが、新たなプロジェクト体制でお作りになり、そのことについて監督は、自由さを感じているのか、それとも不自由なのか。そして、「Legacy Effects」を見学して話し合いを重ね、同社はどのような役割を担えるとお考えですか。

富野監督:半分フリーランサーのアニメ監督という立場で言えば、自由でも不自由でもないという言い方ができますが、今年から来年、再来年という状況の中でのアニメ制作現場というのは、決して楽なものではありません。ですから、新しい制作基盤になるかもしれないフィールドを手に入れられるかもしれない、という意味ではむしろ自由と考えます。と同時に、おそらくはアニメを作る現場が、疲れ切り始めているのではないか、ということも感じるようになってきました。そういうスタッフに対してのカンフル剤になれるプロジェクトを立ち上げていくためには「Legacy Effects」のような要素が入ることが、とてもわかりやすいものではないかと思っています。

では、「Legacy Effects」に何を期待するのかというと、もうスクリーンでご覧のとおりです。技術論に関して不足感というのは一切ありません。キャラクターや何かのメイキングについても、クリエイティビティが高いということについても、当然承知しております。新しい企画も「Legacy Effects」と協調して、検討して立ち上げていくこともあるでしょう。何よりも1本、2本の映画の企画だけで終わらないために、これから1年半くらいの間で「オオカゼ」がどれだけタイトルを並べられるか、というのが勝負になってきます。なので、期待するところはありません。つまり、現在の「Legacy Effects」の力量で十分ということです。

そして、「Legacy Effects」に重要なことがひとつあります。彼らが今日現在の仕事すべてに満足していない、ということです。それがわかりました。それが"ジャパニメーション"の視点なのか、富野の視点なのかわかりませんが、新しく注入することができる、というようなことまでわかってきました。このことについての具体的なコメントについては差し控えさせていただきます。

富野監督の提携第一作については、権利関係の調整が付き次第、近いうちに発表されるという。