日本自動車工業会は19日、「第43回東京モーターショー2013」プレスデー(11月20・21日)に先立ち、「Mobilityscape Tokyo」と題したイベントを都内で開催した。国内外合わせて1,000人規模のプレス関係者を対象に、「日本のモノづくり力」が導くイノベーションについて、日本の自動車メーカーのトップたちが英語によるスピーチで発信した。

日本自動車工業会の会員14社のトップが一堂に会した

同イベントはおもに海外のプレスをターゲットに、日本の自動車産業をより深く知ってもらおうと企画された。トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、三菱自動車の企業トップによるリレースピーチや、会員14社のトップが勢ぞろいしてのフォトセッションなどが行われた。イベントの進行やスピーチは英語で行われ、日本語のほか、スペイン語や中国語に同時通訳されるという、国際的なステージとなった。

リレースピーチは豊田章男氏(日本自動車工業会会長、トヨタ自動車代表取締役社長)からスタート。冒頭、東京モーターショーが初めて開催されてから来年で60年となることに触れ、「この60年間、日本のメーカーはユーザーの変化や社会の変化に対応し、いろいろな『イノベーション技術』を生み出してきた」と、ロータリーエンジンやハイブリッド技術などの具体例を交えて振り返った。

続けて1,300年の歴史を持つ伊勢神宮の式年遷宮を紹介。20年ごとに社を建て替え、匠の技を次世代に継承してきたことなどを説明し、「イノベーションのベースとなっているのは、こうした日本のものづくり力」とアピール。志賀俊之氏(日産自動車代表取締役副会長)へリレースピーチのバトンを渡した。

志賀氏は、2011年3月11日の東日本大震災からわずか数カ月で生産再開を果たした「日本のものづくりの底力」について力説した。続いて登壇した池史彦氏(本田技研工業代表取締役会長)も、「福島第一原発の事故にASIMOを派遣できないか」という声が寄せられたのをきっかけに、エンジニアたちがわずかな期間でバルブ開閉用ロボットや高所調査ロボットを開発したことを明かし、「イノベーションは人の役に立ち、人を幸せにする」と語った。

小飼雅道氏(マツダ代表取締役社長兼CEO)は日本の若者の「クルマ離れ」現象について言及。背景に公共交通機関の発達があるとして、今後、グローバルで同じ傾向に進むことを懸念しながらも、「原因は、『絶対に欲しい』というクルマを自動車メーカーが作れていないからかも」と自省し、「ものづくりをさらに進化させて、グローバルに展開することで、世界の発展に貢献したい」と述べた。

益子修氏(三菱自動車工業取締役社長)がスピーチで取り上げたのは、主要生産拠点のひとつであるタイにて、2011年秋に大洪水に見舞われ、生産停止に追い込まれたときの話だった。現地の部品メーカーが潜水士を雇って金型を引き上げ、早期復旧をめざしたというエピソードを紹介し、東日本大震災からの復旧になぞらえ、「日本のものづくりの強さが世界に根づき、広がっている」とした。

最後は再び豊田氏が登壇。日本自動車工業会加盟14社の技術者が共同で、東日本大震災に耐えて奇跡的に1本だけ残った「希望の松」(岩手県陸前高田市)を、鈑金で再現したプロジェクトを紹介し、日本の自動車産業が持つ「匠の技」と結束ぶりとを印象づけた。

また、2020年に開催予定の東京オリンピックを、「渇望していた未来」と位置づけ、新たなモビリティー社会が誕生するはずだと予測。「これからの日本の自動車産業にご期待ください」と豊田氏は話し、リレースピーチを締めくくった。