未来からタイムワープしてきた時空ジャーナリストが、歴史に埋もれた庶民たちの暮らしを取材するという、異色なスタイルながら現在までシーズン5を数える人気の歴史番組『タイムスクープハンター』(NHK総合)。その映画版となる『劇場版タイムスクープハンター 安土城 最後の1日』が公開中だ。そこでマイナビニュースでは特殊な交渉術を駆使し、物語の主人公である時空ジャーナリスト・沢嶋雄一を演じる要潤に話を聞くことに成功した。

要潤
1981年2月21日生まれ。香川県出身。2001年、テレビ朝日系のドラマ『仮面ライダーアギト』で俳優デビュー。主な出演映画に『UDON』(2006年)、『神様のカルテ』(2011年)、『大奥 ~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』があり、現在『謎解きはディナーのあとで』が公開中。2009年より放送をスタートしたNHKのテレビシリーズ『タイムスクープハンター』では、第1話から主人公・沢嶋雄一を演じている。10月からは主演ドラマ『トイボックス』(テレビ東京系)や『刑事のまなざし』(TBS系)に出演する。

――まずは映画化について、今の率直なお気持ちをお聞かせください。

監督の中尾(浩之)さんをはじめ、スタッフも出演者もテレビシリーズとほとんど同じですが、逆にその分、これまでとは違う特別な思いがありますね。安土城という間口の広い、誰もが知っている歴史の奥深い裏側について、教科書では習わなかった事実もたくさん書物に書かれていて、そこをぜひ映画で描きたいよね、ということは中尾監督とも以前から話していたんです。

――要さん自身も思い入れのある作品とあって、今回の劇場版に関しては全体の方向性やご自身の芝居について、監督とはかなりアツく議論を交わされたのでしょうか。

それが、アツい語り合いはほとんどなくて(笑)。というのも、中尾監督とは『タイムスクープハンター』以前にさかのぼると8年、一緒に仕事をしているので、もう家族のような関係なんですよね。ですから、『タイムスクープハンター』に関しては他のスタッフも交えて食事をしながら、雑談の中で『こういうことしたいな』『ああいうことできたらいいね』みたいな感じで、日常的な会話の中からいろいろなアイデアが生まれていくんです。それに、長いつき合いなのでお互いに好みのツボも分かっていますから、楽な部分はありましたね。

――とはいえ、テレビシリーズは30分という放送時間の中でテンポよく話が進んでいきますが、上映時間が1時間半を超える映画となると、果たして間が持つのか不安はなかったですか?

確かにそれはありましたけど、今回はテレビシリーズでは描かれていない、タイムスクープ社の内部の物語もしっかり描けましたし、この作品の持ち味であるリアルな世界観はもちろん、ジェットコースターのようなリズム感、スリル感もしっかり保たれていると思うので、まったく心配はないです。最後に沢嶋の『大きな歴史の中で、彼らに光が当たることはない。だが、彼らのような人々が懸命に生きたからこそ、歴史は紡がれていくのだ』というナレーションがあるのですが、僕たちが『タイムスクープハンター』で伝えたい、根底にあるそのメッセージは変わりません。

――時任三郎さん、上島竜兵さんといった個性的なゲストキャストとの共演についてはいかがでしたか。

時任さんとの共演は、圧巻のひと言に尽きました。リハーサルをしなかったり、照明や音声がいっさい無かったりする『タイムスクープハンター』独自の特殊な撮影方法を目の当たりにして、『どういうふうに撮ってるの?』と最初は驚いてましたが、いざ撮影となるとものすごい存在感を醸し出してましたし、最後は『楽しいね』とおっしゃっていたのが印象的でした。上島さんはさすが芸人さんということもあって、瞬発力がすごかったです。リハーサル無しの本番勝負、こちらがアドリブを欲しい時にも的確に返して来ていたので、やっぱり"生"の世界で生きている人はすごいなと思いましたね。

――ほかにも今回はタイムスクープ社のメンバーとしてテレビシリーズでもおなじみの杏さん、そして新顔である夏帆さん、宇津井健さん、カンニング竹山さんが出演しています。

夏帆さんも最初は『これでいいんですか?』と尋ねてきましたので、『それがいいんです』とアドバイスしました(笑)。彼女は飲み込みも早いので、半日もすれば『タイムスクープハンター』の世界になじんでましたね。宇津井さんもセットに入っていきなり『本番です』と言われて『え?』と驚いてましたが(笑)、さすがベテランのお芝居を見せてくださいました。

――その夏帆さん演じる新人ジャーナリスト・細野ヒカリと沢嶋が1985年にタイムワープするパートは、詳しくは言えませんがコミカルなタッチでとても楽しめました。

あのパートは中尾監督のコメディーセンスが光ってますよね。監督は僕と笑いのツボが似ているので、シリアスなシーンの中にも確かな手ごたえを感じながら(笑)最後までやり切ることができました」……続きを読む。