16日、第79回カンヌ国際映画祭にて映画『箱の中の羊』が公式上映され、9分間に及ぶスタンディングオベーションを浴びた。翌17日には、是枝裕和監督をはじめ、主演の綾瀬はるか、大悟(千鳥)、桒木里夢、音楽を手がけた坂東祐大がフォトコールおよび公式会見に出席。会見では、本作のテーマや制作の裏側について語った。
「人間らしさとは何か」AIを軸に描く物語
本作は、子どもを失った夫婦が人工知能によって“再生”されたヒューマノイドの子どもと向き合う姿を描いた作品。是枝監督はテーマの着想について、「AIに詳しいわけではない」としつつも、「技術が進歩してもなお残る“人間らしいもの”とは何かを、観客が映画を観た後に辿れるような物語にしたかった」と説明した。
また劇中では手作業の大切さを語る場面もあり、「“無駄”に見える部分こそが生きることにつながるのではないかという思いを込めた」と語った。
AIは俳優の脅威になるか? キャストの回答は
会見ではAIが俳優に与える影響についても質問が寄せられた。
大悟は「まずAIに“自分は俳優なのか”と聞いたら何と答えるのか」と笑いを交えつつ、「今はそこまで脅威ではないが、そのうち怖くなるかもしれない」とコメント。一方、綾瀬は「便利な面はあるが、人が悩み、考え、寄り道しながら辿り着く過程こそ人間らしさ」と語り、「そういったものはなくならないでほしい」と願いを込めた。
喪失と再生を巡る夫婦の物語
本作は親子の物語であると同時に、夫婦関係の再生も重要な軸となっている。綾瀬は、自身が演じた母親について「子どもを失ったことで心が止まり、夫婦関係も停滞している女性」と説明。
ヒューマノイドの存在をきっかけに「閉ざされていたものが少しずつ開いていく」とし、「人が前を向くきっかけはさまざまで、ほんの小さな変化で進めることもある」と語った。
是枝監督も「夫婦の感情は2年間止まっていたが、過去の映像の中にある妻の笑顔を取り戻したいという思いが、物語の転機になる」と明かした。
“死”と向き合うヒューマノイドの意義
ヒューマノイドの存在が示す意味について、是枝監督は「得られるものもある」としながらも、「最終的な解釈は観客に委ねている」と説明。
その上で「消えた後に残る声や庭の木など、死者を想像する力が、グリーフワークのよすがになるのではないか」と意図を語った。
綾瀬「人の領域を超えているんじゃないか」
綾瀬は、是枝監督との再タッグについて「今回さらに穏やかな現場で、優しい空気の中で自然に演じることができた」と振り返る。
また、撮影当日に編集を行い脚本も変更していく制作スタイルに驚いたといい、「その日に撮ったものをその日に編集されて、それを受けてどんどん台本が変わっていくことで、場面がぐっと締まったり、違う広がりがあったり…それが本当に凄いなと思いました」と称賛した。「いつも穏やかなのがすごいと思いましたし、人の領域を超えているんじゃないかと思いました」と、是枝監督の現場づくりについても振り返った。
『箱の中の羊』は、喪失と再生、AIと人間の関係という現代的テーマを通して、“人間らしさ”とは何かを問いかける意欲作。カンヌの舞台で高い評価を受けた本作の今後の展開に注目が集まる。
(c)2026フジテレビジョン・ギャガ・東宝・AOI Pro.
5月29日(金)全国ロードショー
配給:東宝 ギャガ
【編集部MEMO】
『箱の中の羊』
<ストーリー>
息子を亡くして2年、綾瀬はるか演じる建築家の音々(おとね)と、大悟演じる工務店の二代目社長を務める健介の甲本夫婦は、息子・翔の姿をしたヒューマノイドを迎え入れることになる。
彼が到着した日、「おかえり」と駆け寄り喜びを隠さない音々と、戸惑いを隠せない硬い表。情の健介。
夫婦がそれぞれに抱く息子の死への想いが露わになっていく。そんな中、ヒューマノイド翔は密かにヒューマノイドの仲間たちとつながり始める──。





