お部屋を借りる際に請求される「鍵交換費用」。この費用は本来借り主側が払うべきものなのでしょうか? 長年の不動産業界の慣習により、「鍵交換費用」の借り主負担は当たり前になってはいるものの、実際のところどうなのか、“不動産・住生活”のプロに伺いました。


Q.「鍵交換費用」ってあるけど何? 自分でも鍵交換できるのかな?

A.以前の借り主が使用していた鍵の取り換え費用です。事例は少ないですが、貸主や不動産会社がOKすれば自分で鍵の業者を手配して取り換えることも可能です。

取り換えていなかった時期も……

物件広告や内覧時にもらう図面には「鍵の交換費用○○万円」とあることがほとんど。これは、以前の借り主や管理会社などが合鍵を作り、すべての鍵が返却されていない可能性があるからです。万一のリスクをなくすために、新規の入居者用にシリンダーと鍵を交換します。その費用負担額を示します。

物件に表示してある鍵交換費用は首都圏では鍵の種類にもよりますが、最低1万2000円程度からが目安。建物の仕様、鍵の種類によっても異なりますので、防犯性を売りにしている物件の場合、より高い鍵が使用されていることもあります。

かつては、鍵の交換はあまり行われておらず、また交換の際にも退去する借り主に費用を請求していた時期もありました。しかし、最近では、新たに借りる側に費用負担を求める事例が多くなっています。逆に、鍵の交換費用負担が明記されていない場合、「鍵は取りかえられていますか」と確認しましょう。

誰が負担する?

実は、鍵の費用負担者についての法的な定めはないのです。しかし、国土交通省が借り主と貸主の退去時における原状回復や費用負担の一般的なルールを示した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(平成23年8月再改訂版)では、鍵の取り換えは「入居者の入れ替わりによる物件管理上の問題であり、賃貸人の負担とすることが妥当と考えられる」という考え方が明記されています。ただ、このガイドラインは強制力がないため、新たに借りる人がすんなり了承したら、自己負担になってしまいます。

契約は、双方が交渉し納得して結論を導いた結果です。ですから、「決められているから」ではなく、貸主に「鍵の交換については、ガイドラインに賃貸人の負担とするように示されているので、お願いできませんか」と交渉しましょう。貸主も、早期に空室を解消したい場合は、借り主の申し出を受け入れることがあるでしょう。
ただし、入居者が決まりやすい物件では、貸主が「鍵交換費用」を負担することを拒むこともあります。

自分で取り換えると安くなる?

鍵の交換は、貸主から依頼を受けて物件を管理する不動産会社が行います。ここで、不動産会社を通さず、自分が鍵の業者を手配して取り換えることも話し合い次第で可能です。貸主や不動産会社がYesという可能性は少ないですが、了承さえあれば、自分で業者を手配し、シリンダー交換が可能。会社を通さないので、交換費用は減ります。玄関にオートロックがある場合、住所と建物名、以前の鍵番号がわかれば、2週間から1ヶ月程度で作成可能です。なお、入居後に鍵を紛失・破損させたら交換費用は、借り主負担となります。

しかし、どんな場合であっても、基本的に貸主に無断で変えるのはいけません。給排水管からの漏水や火事、事件など何か問題があって、部屋に立ち入りができずに部屋や建物に損害が生じた場合、非常に不利な立場に立つことになってしまいます。管理会社や大家さんに鍵を渡したくない、と思う方も中にはいるかもしれませんが、水漏れや火災は突発的に起きる場合もあります。「もしも」の際のリスクを十分に考慮しましょう。

高田七穂(たかだ なお):不動産・住生活ライター。住まいの選び方や管理、リフォームなどを専門に執筆。モットーは「住む側や消費者の視点」。書籍に『最高のマンションを手に入れる方法』(共著)『マンションは消費税増税前に絶対買うべし!?』(いずれもエクスナレッジ)など。

 

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