日本総合研究所はこのほど、アベノミクスの内容を検証したレポート「アベノミクス、半年間の評価」を発表した。

同レポートでは、安倍内閣が進めているアベノミクスについて、5月下旬以降の金融マーケットの調整により、期待先行・市場先導の第1フェーズが終焉、実体経済そのものの改善が問われる第2フェーズに入りつつあると分析。金融政策主導であった第1フェーズから、「非伝統的金融政策は『期待』に働きかける点で一定の成果を上げ得ること」「金融政策のみに過度に依存することの不安定性・限界が露呈したこと」「想定外の金利上昇に財政再建への強い警告という意味合いが潜んでいること」、以上3点の知見・教訓を得ることができるとしている。

また、アベノミクスを「デフレ均衡」状態にある日本経済を、「正常な経済状態」に戻すための政策パッケージだとし、「第1の矢である金融政策は、サプライズを与えることでデフレ期待の反転を試み、第2の矢である財政政策は、有効需要を創出して需給ギャップを解消する役割を果たす。これら金融・財政政策が効果を発揮している間に第3の矢である成長戦略の実効性を高め、持続的な成長軌道を取り戻しデフレ脱却を成し遂げる」とするロジックを紹介している。

今後については、第3の矢である成長戦略を軌道に乗せることが、今年度内に政府が取り組むべき必達目標だと指摘。2014年度に予定されている消費増税や、アベノミクスがインフレ率の引き上げを目標としている点を考慮すると、成長戦略は、持続性の高いインフレ率引上げファクターである賃金の増加につながるものでなければならないとしている。

CPIの決定要因(出典:日本総総合研究所Webサイト)

これまでの「日本再興戦略」の取組みについては、「国家戦略特区」の設置など既得権益を見直す意思を評価する一方、法人減税や規制改革に対する消極的な態度を批判。「定期的に政策の成果をチェックし、必要に応じて施策を修正・追加していく、いわゆるPDCAサイクルを作り出すことが肝要」だとしている。

さらに、成長戦略の共通弱点である「需要力の強化という視点が弱い」問題を解決するために、「政労使協議会」を首相直属の機関として設置すべきだと提言。失業なき雇用流動化のための施策、ならびに事業再編への支援策を政府が強力に支援することを条件に、労働組合は雇用流動化の受け入れを、経営サイドは賃金引き上げを、それぞれ同時に受け入れる政労使の三者合意が形成される必要があると述べている。

このほかレポートでは、賃金増につながる施策の具体化など今後の政策の重点の置き方の指針や、社会保障分野の財政バランスを改善する基本方針の提示を求めている。