第66回カンヌ国際映画祭で映画『そして父になる』(10月5日公開)が審査員賞を受賞した是枝裕和監督が28日、カンヌから帰国し、成田空港で記者会見を開いた。

審査員賞の賞状を披露した是枝裕和監督

到着口に報道陣のカメラマンが待ち構えていたこともあって、「こんな大騒ぎになっているんだと思ってちょっとビックリしました」と思わぬ反響に驚いていた是枝監督。授賞式後の立食パーティーでスティーヴン・スピルバーグをはじめとした審査員に同作の感想を尋ねた時のことを、「スピルバーグ監督からは『この作品を見てから何かの賞を与えたいと思っていた』という言葉をいただいた」と振り返り、そのほか、子どもを自由に遊ばせながら撮る手法が同じだったことや、"子どもの取り違え"というこれまで度々取り上げられてきたテーマを父親を中心に描いたことで物語の構造が明確化したと評価を受けたことなどを明かした。

また、授賞式の舞台袖で脚本賞のジャ・ジャンクー監督、審査員のチャン・ツィイー、カメラドールのアンソニー・チェン監督と雑談していた時のことを「チャン・ツィイーが『エイジアンパワー』と言って、みんなで笑いあったんです」と思い返し、「そういうアジア頑張っているねという感じが映画祭に出てうれしい瞬間でしたね」と笑顔で語った。そして、「もちろん日本映画が注目されることはうれしいですけど、映画祭に参加すると国を閉じるというよりは、むしろどこの国に所属していても、もっと広く映画というものに包まれている感じ。それがいちばん幸せな瞬間なんですよね」と感動を伝えた。

是枝監督は第57回カンヌ国際映画祭でも、『誰も知らない』(2004年)を出品し、主演の柳楽優弥が最優秀主演男優賞を受賞。その後の『歩いても歩いても』(2008年)、『奇跡』(2011年)も海外で高い評価を受けた。是枝監督はそのことに触れ、「この10年に作ってきた映画の蓄積というか、広がりというか、そういうものを受け止めた上で見てくれた。作品を通して共有できているものの大きさ、豊かさがこの作品の後押しとなったのかなと思います」とカンヌでの反響を分析した。

「常に頭の中に5~6本の企画がある」と語る是枝監督。今後については、「今年はこの映画をどうやって日本の皆さんに、世界の皆さんに届けるかということに全力を注いで、次に何をやるかは来年に入ってから具体的に考えたい」と語り、「まだオファーは殺到していないので、こんなものやらせてみたいという企画がありましたらお待ちしております」と笑顔で語った。