ボンジョルノ、イタリア! バスに乗れば、その土地の"素顔"が見える

アドリア海に面した南イタリアの港町、バーリ。ブーツの形をしたイタリアのかかと部分に位置する古都だ。イタリア好きなら知っている、かわいらしいとんがり屋根で世界遺産に認定された「アルベロベッロ」への空の玄関口、バーリ国際空港を擁する町である。

最近では、日本からローマ直行便などで乗り換え、その日のうちにバーリ国際空港に到着し、バーリで宿泊して「アルベロベッロ」へ行くツアーもいくつか用意されているようだ。ローマからバーリまでは4時間以上かかる列車の旅。バーリから「アルベロベッロ」までは約56kmの距離で、列車だと1時間半で行ける。

バーリはかつて路面電車も走った歴史ある町で、いまでも街中を歩けば、古都の名残を感じられる。古くから港町として知られ、現在でも旧港と新港の2つがあり、漁船だけでなく豪華なクルーズ船も停泊している海辺のリゾート地だ。

サッカーも盛んな土地柄で、中でもASバーリは幾度となくセリエAで戦った経歴を持つが、残念ながら現在はセリエBにいる。

町の中心にあるバーリ駅前のバスロータリー

4番線バスの発着地点は海風の吹く海岸近く

どのドアから乗るか決まりはない。ご自由に

行きかうバスの車体にはさまざまな広告が

バーリで旧市街以外を観光するなら、バスに乗るのが一番快適だ。海岸沿いを走るバスは、車窓に広がるアドリア海を眺めるだけでもさわやかな気分になれる。朝夕に乗車すれば、市民の出勤・退社時間と重なり、午後に乗れば子供たちが学校から帰る場面に遭遇する。旅先で空いた時間にバスに乗るのも、地元の人たちの素顔が垣間見れて楽しいものだ。

ただし、バス路線図は用意されていないので、市内周遊バスなどに乗る場合はホテルのフロントでの確認をおすすめしたい。筆者が宿泊したホテルは、旧市街にも近い「ホテルグランドパレス」で、窓からヴィットリオ・エマニュエルII通りを行き交うバスが見えた。

日本のバスと違い、「前乗り後降り」などのルールはなし

現地のバス停に行ってみた。そこには路線図と時刻表が貼ってある。「2番」「21番」「22番」……というように、バスはすべて番号で表示されている。

乗車券は、バスターミナルにもなっているバーリ駅のアルド・モーロ広場の窓口でも購入可能だし、バスに乗車した後も運転手から購入できる。バスの乗り方に関して、ドアは前方・中ほど・後方と3カ所あるが、日本のように「前乗り後降り」といった規則はなく、乗客は自由気ままに近い所から乗車している。ただし、日本のバスのように自動ドアではないので、乗車の際はボタンを押さなければならない。

乗車券を買うなら前方から乗るのが望ましく、乗車券は1.5ユーロ。購入してすぐ機械に入れると、乗車券に時間が刻印される。乗車券には、「75」という数字もデザインされており、刻印された時間から75分間、この乗車券1枚で、何回でもバスを利用できるという。なお、裏面に日付を書きこむようになっていて、これはバーリのバスだけでなく、イタリアでは大体同じようなシステムとなっているようだ。

イタリアらしい赤と白で統一された車内

バス停の路線マップで行先を確認

ローマのような大都市では、バスの乗車券1枚で、定められた時間内でバス・地下鉄を何度でも利用可能とのこと。1日自由に乗降りできる1日乗車券もあり、価格は2ユーロ20セント。利用した日の最終バスまで利用できるシステムになっている。

バスを降りるときは、近くにあるボタンを押すと、前方にランプが点灯して次のバス停で止まることを知らせる。降りるときもドアは自動ではなく、ボタンを押さないと開かないようになっているので注意が必要だ。日本のバスのように黙って立っていると、そのまま降りられなくなってしまうことも……。なお、バスのタイプによっては、車内に備え付けられたテレビ画面によって、路線図が表示されるものもある。

バーリの市街地には歴史ある劇場も

映画祭会場にもなる19世紀様式のペトルツェッリ劇場

せっかくなのでバーリの市街地についても紹介しよう。町の中心、カブール通りに面し、19世紀様式で建設されたペトルツェッリ劇場では、オペラやバレエが上演されている。この劇場は、周防正行監督の映画『ダンシング・チャップリン』(2011年公開)にも登場した、20世紀を代表するフランス人振付家、ローラン・プティが世界初演した劇場だ。

内部はステージの上に時計がはめ込まれるなど、19世紀のイタリア独特の劇場スタイルに。1991年10月26日に大火事が起こり、劇場内部の大半が焼失したが、2009年に再建された。3月後半になると、この劇場を中心にバーリ市内の映画館を使い、バーリ国際映画祭が開かれる。今年で4回目という新しい映画祭だが、海外の巨匠監督やオスカー俳優が姿を見せるなど話題になっており、これからどんどん有名になるだろう。

ペトルツェッリ劇場までは、バーリ駅から歩いて15分程度。中世の城や教会がそびえ、城の周囲の旧市街は車が入れないだけに、迷路のように入り組んでいる。通りにはマリア像が立っていて、時代をスリップしたような感覚に陥ることだろう。

交通・街並・料理など、バーリ写真コレクション

バーリ空港は人気のLCCライアンエアーも就航している

鉄道パスを持っているならローマ・バーリ路線もいい

バーリ駅前にある観光案内所では英語もOK

旧市街の街角。突然、中世の旅人になった気分に

マリア像は日本の「お地蔵様」のような存在

これが本物の復活祭(イースター)パレード

旧市街の庶民派レストランは内部もシック

海外沿いの町だけに、地元の料理も海の幸が豊富

甘いドルチェ。イタリア料理の締めにぴったり