フランス・パリの地下鉄は、「メトロ」「メトロポリタン」の愛称で人々から愛され続けている。現在14路線あるが、日本の「銀座線」「丸ノ内線」のような路線名はなく、すべて「1号線」「2号線」……と、開通した順に番号で呼ばれている。

14路線を持つパリメトロ。駅の地上入口のサインは、赤地に「METROPOLITAIN」と描かれたものをはじめ、複数のデザインがあるという

10枚つづりの「カルネ」で、地下鉄だけでなくバスにも乗れる!

パリのメトロが開通したのは1900年。パリ万博の開催とともに、ヴァンセンヌの森からルーヴル美術館、シャンゼリゼ大通り、凱旋門などを経由し、セーヌ川に並行してパリ市内を東西に走る1号線が開通した。他路線のドアは手動式が多いが、1号線の車両は自動ドア。駅によっては日本語の駅名表示もある。

パリのメトロを利用するなら、1枚1枚きっぷを購入するよりも、10枚つづりの「カルネ」を購入したほうがずっとお得だ。日本と違って有効期限もないし、地下鉄だけでなくバスのきっぷにもなる。カルネはメトロの駅だけでなく、たばこを販売するカフェにもあるし、フランス語が話せない人もオペラ座近くのJCBプラザ(平日のみ営業、支払いはJCBカードのみ)なら日本語で購入できる。

きっぷは日本と同様、入場するときは必要。ただし、下車するときにはほとんどの駅で提示する必要がないため、一度入場するときっぷを捨ててしまう人も……。実際には無賃乗車を取り締まるコントローラーが駅構内に潜んでいたり、係員が車内まで調べに来たりするのでご用心。きっぷを所持していないと法外な罰金を支払うだけでなく、パスポートなど身分証明書を所持していない外国人旅行者だと、不法滞在者と疑われる可能性もある。

パリのメトロには人名が由来の駅名が多い。日本語による表示も見られる

ホームにシャトレ劇場「坂東玉三郎 公演」の広告も。今年2月に開催された

パリのメトロの始発電車は5時前後で、終電は25時前後。地下鉄といっても、一部で地上を走る区間があるのは日本の地下鉄と同じ。2号線においては、電車が地上に出て、エッフェル塔を見上げながらセーヌ川を横切る区間がある。セーヌ川付近では、米国に贈られ、いまやニューヨークのシンボルともいえる自由の女神像のオリジナルの姿を見つけられるし、2号線であればモンマルトルの丘のサクレクール寺院を眺めることもできる。

人名に由来する駅名には、その人物に関わる物語がある

駅名に目を向けると、同名の広場に由来するバスティーユ駅やリパブリック駅、橋の名前に由来するポンヌフ駅やミラボー駅など地名を冠したものから、ヴィクトル・ユーゴー駅、アナトール・フランス駅、エミール・ゾラ駅といった人名に由来する駅まで多彩だ。ヴィクトル・ユーゴー駅は、『レ・ミゼラブル』で知られる文豪、ヴィクトル・ユーゴーが住んでいた家の近く。エミール・ゾラ駅のそばには、ゾラと因縁薄からぬドレフェス広場が存在する。人名の付いた駅の周辺には、その人物に由来した物語があるのだ。

パリメトロ3号線のルイーズ・ミシェル駅。ホームのつくりも広告もどことなく芸術的

そんな中、1駅だけ女性の名前に由来する駅名が。3号線のルイーズ・ミシェル駅だ。パリと隣接するレヴァロア・ペレにあり、この駅の近くに、パリ・コミューンで活躍した女性革命家、ルイーズ・ミシェルが暮らしていたことがある。彼女は現在、「ボレロ」で知られる音楽家モーリス・ラベル、エッフェル塔の設計で知られるグスタフ・エッフェルらとともに、このルイーズ・ミシェル駅の近くの墓地に眠っている。

パリのメトロは旅行者の足というだけでなく、パリならではの観光も満喫できる手段だ。駅名を見ただけでもフランスの歴史が見え隠れしているようで、おもしろい。