第148回芥川龍之介賞、直木三十五賞の選考会が16日、東京・築地の新喜楽で行われ、芥川龍之介賞に黒田夏子氏の『abさんご』が選出された。

芥川龍之介賞を史上最年長で受賞した黒田夏子氏 (C)篠山紀信

黒田氏は、昭和12年東京生まれ。昭和34年に早稲田大学教育学部を卒業し、教員・事務員・校正者として働きながら執筆を続け、昭和38年に『毬』で、丹羽文雄が選考委員を務める「読売短編小説賞」に入選。昨年9月に『abさんご』で第24回早稲田文学新人賞を受賞し、75歳にしてデビュー。同賞の授賞式で「今は受賞が遅くて良かった、という気持ちがあります」と話していた。そしてこの『abさんご』で芥川賞に初ノミネート、初受賞を果たし、1974年に『月山』で受賞を果たした当時61歳の森敦さんを抜いて、今回、史上最年長での受賞となった。

『abさんご』は、全文横書き、かつ「固有名詞」や「かぎかっこ」、「カタカナ」を一切仕様していないという日本語の限界に挑んだ実験的小説でありながらも、その文章には「昭和」の知的な家庭に生まれたひとりの幼子が成長し、両親を見送るまでの美しくしなやかな物語が書かれている。『abさんご』は、1月20日(月)に刊行され、表題作のほか、先述の読売短篇小説賞に入選した幻のデビュー作『毬』など3編を併録。この部分は縦書きのため、前からも後ろからも読める装丁であり、著者の「50年かけた小説修行」の軌跡を辿ることができる小説集となっている。

また、直木賞には朝井リョウ氏の『何者』、安部龍太郎氏の『等伯』が選出された。朝井氏は1989年生まれ、後に映画化も果たした『桐島、部活やめるってよ』で2009年に第22回小説すばる新人賞を受賞。朝井氏はこの受賞により、戦後生まれとしては同賞史上最年少での受賞となった。

一方の安倍氏は、1955年福岡県生まれ。数々の新人賞に応募し、1990年に発表した『血の日本史』で注目を集め、2004年『天馬、翔ける』で第11回中山義秀文学賞を受賞していた。

(C)篠山紀信