雪国の風景によく映える、美しきタンチョウの容姿

古来より日本や中国などで愛されてきたタンチョウ。現在は天然記念物、そして絶滅危惧種に指定されており、日本では北海道でしかその姿を見ることはできない。それほど貴重なタンチョウと、いとも簡単に遭遇できるスポットがある。雪景色に覆われる季節にはなんと、ほぼ100%というハイアベレージで出会えるその場所は、道東の鶴居(つるい)村だ。

る出会いスポット名は分かりやす過ぎる「鶴見台」

タンチョウは現在、日本では北海道に、海外ではユーラシア大陸に生息している。渡り鳥であるタンチョウは、繁殖期には広大な低層湿原や海岸、河川や湖沼などに生息し、越冬期になると湿地や耕地、不凍の河川や湖沼で過ごす。江戸時代あたりまでさかのぼると、北海道だけではなく東京近辺にも生息していたらしい。

大正13年(1924)には約30羽にまで減少してしまったが、近年は約1,000羽まで生息数が回復している。しかし、絶滅のおそれのある動物をリストアップした環境省の「レッドリスト」にも指定されているし、貴重な鳥であることに変わりない。

日本唯一の生息地、北海道の中でもタンチョウに出会える地域は限られている。阿寒(あかん)や釧路湿原の周辺だ。とはいえ、ひと口に「阿寒や釧路湿原周辺」といっても、かなり広範囲である。しかしご安心を。ピンポイントで出会える場所があるのだ。

その場所は、釧路国立公園に隣接している鶴居村だ。この鶴居村にある、その名もズバリ「鶴見台」こそ、タンチョウと出会えるスポットだ。

タンチョウが飛翔する姿は、見るものの心を打つ何かがある

大地が雪に覆われる時期はほぼ100%出会える

鶴見台はタンチョウの給餌場(きゅうじじょう)のひとつ。給餌は11~3月の冬季、朝方と午後2時30分頃の2回行われるが、この時にはほぼ100%に近い確率でタンチョウを見ることができるのだ。

昭和30年代、冬になると付近の小学校の教師と子どもたちが給餌していたことで、タンチョウが集まるようになった。ところが小学校は昭和49年(1974)に廃校。その後、近くに住む渡部トメさんが子どもたちの後を引き継ぎ、現在の場所で給餌を続けているという。

鶴見台の周辺は主に農地や山林で、それらの場所に少しでもエサがある時期は、あまりタンチョウの姿を見ることはできない。しかし周囲が雪景色に覆われる季節ともなると、タンチョウたちはトメさんが与えてくれるエサが貴重な食料となるため、集まってくるのだ。

雪が積もる直前に取材に訪れたが、その時でもわずかながらにタンチョウはいた

暖かな場所でゆっくりとタンチョウを見ることもできる

さて、雪の季節はかなり高い確率でタンチョウを見ることができるが、寒いのはやっぱりツライ。しかし心配御無用。暖かい場所でゆっくりと観察することもできる。

鶴見台のすぐ向かいにあるカフェレストラン「丹頂が見える店 どれみふぁ空」には、店内からでもしっかりタンチョウを観察できるように大きな窓をしつらえてある。そこから優雅なタンチョウの姿を眺めることができるのである。

冬になると全国、そして海外からも、タンチョウを見ようとかなりの数の人がこの店を訪れる。地元の食材や自家製ハーブを使ったハーブティーなど、ハイグレードなものを提供していることも人気の秘密だろう。そして店内がバリアフリーになっているのもうれしい。多目的トイレも完備しているので、高齢者や障がい者でも気軽に利用できる。

タンチョウの美しさは、極寒の大地に実によく似合う。ちなみに、冬の北海道ならではの野生美を観賞できるここ鶴居村には、全国からの移住者も多い。しんしんと雪が降るこれからの季節にこの地を訪れたら、ここに移り住みたくなる気持ちが理解できるはず。

どれみふぁ空の暖かい店内からもタンチョウを見ることができる

●information
釧路湿原国立公園連絡協議会