秋がやってきました。秋といえば読書、そして恋愛の季節でもあります。その二つをいっぺんに堪能するためには――そう、恋愛漫画を読めばいいのです!

しかしですよ。世の中には読み切れないほどの恋愛漫画があふれており、ちょっと食傷気味だという人も多いはず。そんな男性の皆さんに提案です。

BL漫画を読んでみるのはどうでしょう?

BL、すなわちボーイズラブは男性同士の恋愛を描いた作品で、基本的には女性向け。しかし、中には男性が読んでも十分楽しめる作品だってあるのです。今回は電子貸本サイト「Renta!」より、男性でも読みやすいBL漫画を3作品厳選してオススメしようと思います。

『素晴らしい失恋』(竹書房刊)

素晴らしい失恋

サラリーマン社会を舞台にした短編5本を収録した一冊。なぜこれを選んだかというと、まずサラリーマンという題材が多くの男性の共感を得るだろうということと、ボーイズラブでありながら登場するキャラクターの心情・恋愛観が非常に男性にも共感しやすいものであるから。

そしておすすめする最大の理由は、内容がリアルだから、です。

たとえば表題作『素晴らしい失恋』は、仕事はできても恋愛に関しては誠実性ゼロ、とっかえひっかえ女性とドライな関係を続ける新任課長・内藤と、そんな彼が密かに思いを寄せている日野田部長との切ない恋を描いた物語。

本心では日野田部長に思いを寄せる内藤ですが、既婚者であり上司でもある部長に自らの思いを告げることができるはずもなく、女性を弄ぶことでやりきれない思いを発散しています。内藤の行動はちょっとどうかと思いますが、決して報われない恋愛に苦しむ彼の心の叫びは、男女関係なく辛い失恋を経験した人にぐさりと刺さるはず。

この心情表現のリアリティこそが本書で一貫している部分であり、その他の作品でも実にリアルな恋愛模様が描かれています。ご都合主義で無理にハッピーエンドに持って行かない作風も好印象。

社会のしがらみの中で必死にもがくサラリーマンたちが織りなす大人のラブストーリー。おすすめです。

『刺青の男』(茜新社刊)

刺青の男

BLにはいわゆる「ヤクザ」というジャンルがあります。任侠とバイオレンスが渦巻くヤクザ業界は、まさにザ・男の世界。それ故にBLの題材として好まれるのでしょう。

本書『刺青の男』はそんなヤクザ物のBL漫画。オムニバス形式なので初心者にも読みやすい一本だと思います。ヤクザ物といってもそこまでの残虐表現はなく、任侠道ならではの硬派な男たちの心の交流がメイン。物語の主役となるのは、刺青を持つ3人の男たち(牡丹の潟木・ラナンキュラスの武藤、狂い鮫の埜上)。そこに謎の男・久保田が絡んでいくことで話が展開していきます。

注目すべきは、どこに着地するかわからない予想外のストーリー展開。ミステリさながらにあっと驚かされる場面もあり、一方で登場人物の心の動きをしっかりと描いているため、感情移入も容易です。

"何となくヤクザ社会を舞台にしました"という気軽なノリではなく、ベースとなる設定や世界観がしっかりした非常に重厚なラブストーリーは、男性でも間違いなく楽しめるでしょう。

『作品ナンバー20』(リブレ出版刊)

作品ナンバー20

ミステリ、ファンタジー、芸術――さまざまな要素を織り交ぜた非常に奥の深いBL漫画。というよりも、これはBLがどうとかいう以前にまず漫画としての完成度が非常に高いです。

舞台となるのは現代のヨーロッパ。ある一枚の絵に惹きつけられ、忘れられなくなった少年モーリスは、それから10数年後、絵画修復師として活躍していました。

そんなモーリスの元に、再び"あの絵"がやってきます。その美しさに心を奪われるモーリス――と、驚くべき出来事が起こります。なんと、モーリスの目の前に、絵画から抜け出た青年が現れたのです。なぜ青年は絵から抜けだしたのか。そもそも青年はいったい誰なのか。絵画に秘められた謎を追って、モーリスと青年は過去の調査を始めるのでした――。

何よりもまず設定が面白い。「ダヴィンチ・コード」を思わせる歴史ロマンにあふれたストーリーは男性でも、むしろ男性にはぴったりのテーマだと思います。一方で、モーリスと絵画の青年との心の交流も見どころの一つ。謎に満ちた美青年の存在感は圧倒的で、読み始めたら最後までページをめくる手が止まりません。自信をもっておすすめできる作品です。