ゴワゴワにひび割れた皮をまとい、ガバリと大きく裂けた口には鋭い歯を連ねるワニ。その姿から、抱かれるイメージはまず"恐怖"だろう。デパートに陳列されたワニ革のバッグならばともかく、生きているワニに出会いたいとはまず思えない。

そんなワニでも、肉は淡白な味わいでなかなかおいしいという。実際にオーストラリアではワニが広く養殖され、食素材として流通している。現在ではオーストラリア産ワニ肉が日本国内でも購入可能で、ワニの尾のフィレ肉は1kg4,000円、手羽肉は1個200gのものが500円で手に入れられる。ネットで「手羽肉」(実際は前足肉)を2個購入し、さっそく試食してみることにした。

冷凍ワニ手羽が届いた

生ワニ肉。少しだけ残された皮と爪が、強烈にワニであることを主張している

注文から数日後、冷凍ワニ手羽が届く。「Crocodile」の表示と共にワニのリアルなイラストが描かれたパッケージから取り出した身は、一見したところ鶏のモモ肉と変わらない。しかしゴツゴツした皮が「手袋」のように残された手の部分と鋭い爪に、素材の正体をうかがえる。

味わいは鶏そのもの

ワニ肉と玉子の煮付け

さっそく調理にとりかかる。まずは鶏肉の煮付けの要領で、茹で玉子と一緒に醤油味で1時間かけて煮しめてみる。これが本当においしい。歯ごたえも味わいも鶏肉そのまま。煮込まれた軟骨は奥歯に快い感触を残して噛み砕かれる。そして煮汁に一滴の脂も浮かないほど淡白な肉ながら、噛むほどにしっかりとした旨味がにじむ。まさに鶏肉といった味わいだが、骨太な骨格と先端の爪でようやくワニと気が付くところ。

もう一本の肉は、塩水、ニンニク醤油、生姜、香草を混合したタレに数日間漬け込んだうえ、200℃に熱したオーブンで十数分かけて焼き上げた「ロースト・クロコダイル」。これもやはり鶏肉そのままの味わい。塩水をしみ込ませた肉は火が通ればプリプリと歯に響き、飲み込めば風味付けのローズマリーが喉の奥で香る。

タレに漬け込んだあとオーブンで焼いた「ロースト・クロコダイル」

さらに特筆すべきは手の部分だ。厚いワニ皮をはぎ取れば、閉じ込められていた肉汁がトロトロと流れ出す。透明な汁にはゼラチン質の旨味がたっぷり含まれ、実に味わい深い。

鶏肉に似て、鶏肉以上においしい特性をいかせば、ワニ肉のレシピは無限に広がるだろう。