――今回のようにゲームからのアニメ化の場合、通常のアニメとは何かちがうところはありますか?

浪川「ゲームが原作だからといって何かが変わるわけではないです。ただ、『緋色の欠片』に関しては、6年間という長い期間があり、アニメ化してほしいという気持ちもありつつ、あきらめかけていた部分がありました。なぜアニメ化したいかといえば、たくさんの人に作品のことを知ってもらいたいから。別に自分のエゴで動くキャラを演じてみたいということは一切なく、多くの人に知ってもらうためにはアニメ化が一番の手段だと思っているからなんです。もちろん、アニメにしかできないこともたくさんありますから、そこは全力で楽しみたいと思っていますが、やはりこの作品に関しては"6年間の重み"というものが大きいですね」

――特に原作がゲームだからといって、意識することはないわけですね

浪川「そのあたりは作品によるところがあって、たとえば今放送されている『ペルソナ4』の場合、主人公を演じさせていただいていますが、原作のゲームには声がない。なので、僕が声をあてることによって、新しいイメージを押し付けてしまうことにならないかというのが少し怖かったりもしましたが、今回はすでに聴いてもらっている声なので、安心して収録に臨めました。ただ、今回のアニメは一番最初の『緋色の欠片』なので、戻るのが大変で……。現在、ゲームのほうは6年後の話になっていて、僕の役も大学生なので、全然違っているわけですよ。これが僕だけではなく、みんな大変そうでした」

――声の部分もそうですが、演技の部分ではいかがですか?

浪川「やはりゲームだと表現しきれないところがでてくるので、フォントで処理されたりするところもありますし、何より一人で収録しないといけないわけです。でも、アニメならみんなで一緒に収録できるので、どうしてもゲームでは埋められなかったところを埋めることができる。たとえば空気感とか。ゲームだと、自分以外のキャラクターのルートに入ってしまうと、ほとんど出てこなくなりますが、アニメならみんなが一緒にいる。それによって生まれる空気感は、アニメならではのものだと思いますし、それに助けられるところもあります。そういう意味で、6年という月日が経っている作品でありながら、収録するたびに、新たなる発見があったりもします」

――あらためてアニメで演技してみて、狐邑というキャラについて新たな発見はありましたか?

浪川「あらためて思ったのは、よく寝てるなって(笑)」

――ゲームだと寝ているシーンは収録と関係ないですからね

浪川「すーすーって寝息もちゃんと録っているのですが、実際にどこで使われているのかなんてわからないですから。アニメになって冷静に見てみると、誰かが喋っている裏でずっと寝ているんですよ。本当によく寝ています(笑)」

――6年という月日を経た作品なので、やはり収録現場の雰囲気も和やかな感じでしょうか?

浪川「どちらかというと微妙な緊張感がある現場です。まだ収録が始まったばかりということもありますが、『やったね、俺たち! アニメ化されたね!』みたいなあっけらかんとした雰囲気ではないです。ストーリー自体がそこまで明るいものではないということもありますし、ヒロイン役の三宅(麻理恵)さんをみんなで支えていかなければいけない。そういう意味では、シナリオと一緒で、これから紡がれていく序章みたいな雰囲気かもしれません。何年かぶりに出会った友だち同士みたいな感じで、別に仲が悪いわけでもないけど、馴れ馴れしいわけでもない。そんな、いい意味での緊張感があります」

――作品の中で、視聴者の方に注目してもらいたいポイントはありますか?

浪川「もちろんシナリオを中心に観てほしいというのはありますが、アニメならではのコーナーがCパートにあるので、ぜひそこを観て笑い飛ばしてほしいですね」

――そこはお遊びといった感じですか?

浪川「真剣なんですよ。すっごく真剣なんですけど、きっと『何やってんだよ……』って感じになると思います。全然ストーリーとは関係なくて、『これ本当にいる?』みたいな感じになっているので(笑)、ぜひご注目を」

――ちなみに、ずっと寝ているという狐邑ですが、寝ているところ以外で注目してほしいポイントはありますか?

浪川「狐邑は、ちょいSみたいなところがあって、意外と言いたいことははっきりと言う子なんです。ただ、思っていることをちゃんと口には出しているのですが、どうも聞き流されがちで……。狐邑の言葉って、みんなと一緒だと効果音に近い感じになってしまうので、視聴者の方は、ちゃんとそこに狐邑がいるということを忘れないで、しっかりと観てほしいです。セリフ自体も本当に少ないので、聴き逃さないように(笑)」

――狐邑以外で好きなキャラクター、気になるキャラクターはいますか?

浪川「みんな好きなんですけど、気になるのは大蛇卓さんですね。ヒロインの姫に対する態度が、すごく優しいんですけど、いちいち顔が近かったり、いやらしかったりするんですよ。まだ出会ったばかりなのに「それはないだろう!」って僕は言いたいですし、これはみんなの総意でもあります。序盤の序盤でこれだったら、後半はどうなるんだと(笑)」

(次ページへ続く)