映画監督の岩井俊二が10日、東京・オーディトリウム渋谷で行われた、映画『friends after 3.11』の初日舞台あいさつに出席した。

左から、藤波心、松田美由紀、岩井俊二監督 拡大画像を見る

映画『friends after 3.11』は、東日本大震災で大きな衝撃を受けた宮城県仙台市出身の岩井監督が、女優の松田美由紀をナビゲーターに迎え、震災以降に出会った人々や再会した友人たちと震災当時とその後、未来を語るドキュメンタリー。インタビューでは、京都大学原子炉実験所助教授の小出裕章、元東芝・原子炉格納容器設計師の後藤政志、環境活動家の田中優、俳優の山本太郎らが、原発問題などについて想いを語っている。映画はオーディトリウム渋谷で公開中。

舞台あいさつには、岩井監督と松田、"脱原発"アイドルの藤波心が出席し、岩井監督は「震災以降、新しい友人や久々に会う人と熱く語り合った。最初、自分自身は全く作品を作る意向はなかったし、安々と作品に昇華できるとは思えなかった」と当時を振り返り、「でも、人との出会いを通じて、自分でもやれるものがあるという気持ちが湧きあがってきて、色んな人の話を作品にすることができた」と真摯に語った。「震災がなかったら、日本は今も平和に自分たちが好きな事をやり続けていただろう」と話す岩井監督は、「核の脅威と続く地震という、かつてない未曾有の脅威に、大人も子どもも真剣に向かい合っていかねばならない」と進言した。

ナビゲーターを務めた松田は、「震災後、人生が変わった。見てはいけないものを見てしまったし、気づいてしまった」と話し、「多くの国民が政治や国、マスコミの問題を知ってしまったからには、引き返せない」と強調。「環境問題には職業も人種も関係ないはず。政治を動かすのは政治家ではなく、国民ということを、一人ひとりが自覚してほしい」と熱弁した。同作は、第62回ベルリン国際映画祭フォーラム部門に正式招待されており、ベルリンでの上映に立ち会った藤波は、「世界中の人に日本の脱原発に向けて頑張りましょうって励まされました」と話すも、「広島、長崎と原子爆弾の被害を受けて、今回の震災でも原発事故があって、それでも脱原発ができない日本はクレイジーだと言われた」とのエピソードも。「宮城のロケから帰って、普通の生活に戻ってから、当たり前のことが一番の宝物だと気づいた」と語った藤波は、「今の日本の状況は、第2の福島を作りかねない。家族や仲間たちと話し合って、脱原発の輪を広めてほしい」と強く訴えていた。