明日で東日本大震災から1年。その後に発生した福島第一原発事故によってまき散らされた放射能。時間が経つにつれ、次々と明らかになる汚染の実態に、多くの人が放射能に関心を寄せる中、個人で放射線量を測定する人々が増加している。
エステーから2月に新製品が
そんな中、満を持して登場したのが、エステーが2月に発売した「エアカウンターS」だ。放射線測定に関しては、国民生活センターが粗悪品への注意喚起を促すなど賛否両論がある中で、普及量産モデルとも言える廉価な商品を昨年10月に先行して発売した同社。今回発売された商品は、希望小売価格7,900円とよりリーズナブルになり、使い勝手も向上。今回は、そんな話題の新製品を使ってみた感想などをレポートしたい。
まずは外観。第一印象はまるで体温計のよう。筆者がこれまで目にしたことのある線量計は、計算機やトランシーバーのような形状だったのに対して、こちらはスティック状だ。いかにも線量計というイメージがない点が新しく、屋外で使用していても放射線を測っているようには見えない点もポイントが高い。
本体表面。表示液晶とリセットボタン、音のオンオフボタンがある。音をオンにした場合、放射線をカウントするごとに「ピッ」という音が鳴る |
側面に電源スイッチがあり、スライド式のキャップを外すと、裏側に単三乾電池1本を入れる場所がある。メーカーの仕様によると、アルカリ電池で1日1時間使用した場合の電池寿命は約2カ月間 |
使用方法は、単三電池を入れ、電源スイッチをオンにするだけ。カウントダウンがディスプレイ上で始まり、その後"予測値"が表示される。ランダムに空間を飛び交っている放射線の計測は、検出器がとらえた放射線をカウントし、それを1時間あたりの人に対する影響の大きさを表す単位に換算して表示する。いまやお馴染みとなった"μSv(マイクロシーベルト)"だ。
前代機では最長5分だった測定時間を、エアカウンターSでは、最長2分にまで短縮したのが大きな改良点。計測が終了すると点滅ランプが消え、以降は10秒ごとに直近1分間の平均値を更新して表示する。同製品が検出体として利用しているのは、"フォトダイオード"と呼ばれるシリコン半導体の一種。安価な製品を実現したポイントの1つともいえる。
シンチレーション式線量計とも大差はなく
シリコン半導体は、放射線の主にγ線を検出する。γ線以外にもβ線も検出してしまう一般にガイガー・カウンターと呼ばれているガイガーミュラー管を使用した線量計に比べて、より精度が高いとされている。また、より精度が高いとされるシンチレーション式線量計(シンチレーションカウンター)と並べて計測した結果とも比べてみたが、さほど大きな誤差はなかった。
幼稚園の前で通報基準を超える値の場所を発見。付近一帯も高い値を示したため、後日改めて測定することに |
上の写真のように高い値が示された一帯をホリバの「Radi」と再計測。2機種の数値は、だいたい誤差の範囲内で収まっている印象。通報基準は下回り、前回ほどの高い値は示されなかったが、周辺よりも微妙に高め。このように様々な条件や時間、場所で計測をして調べていくことにより、放射線の特性や傾向が掴め、目に見えない放射能がだんだん理解できるようになる |
子どもの遊び場である都内の公園で測定。この日は0.07~0.14μSv/hの場所が多かった |