格付投資情報センター(R&I)は25日、東京電力の発行体格付を「AA+」から「AA-」に格下げしたと発表した。東日本巨大地震による設備の被害が甚大で、収支・財務の大幅な悪化が避けられないとの判断に基づく。

格付をAAゾーンにとどめたのは、「電力事業の公共性、それに伴う様々な保護措置を考慮したため」。ただ福島第一原子力発電所の状況が深刻で、収益基盤・財務基盤への中期的影響を見通しにくいことから、発行体格付のレーティング・モニター(格下げ方向)を継続するとともに、コマーシャルペーパー(CP)の格付も格下げ方向でレーティング・モニターに指定した。

R&Iによると、福島第一原子力発電所に加え、火力発電所の一部も地震で被害を受けており、「それらの復旧に多額の費用負担・資金負担を強いられる可能性が高い」。電力の安定供給に向けて原子力発電に比べ燃料コストの高い火力電源の多用を余儀なくされることが響き、「収支・財務は大幅に悪化すると予想される」(R&I)。

福島第一原子力発電所は、懸命の復旧作業が続いているが、早期に全ての原子炉で冷温停止状態を確保できるか予断を許さない。放射性物質の放出が確認されており、その影響は福島県外にも及んでいる。

原子力事業者が原子炉の運転などにより周辺地域の住民や器物に損害を与えた場合、原子力損害の賠償に関する法律により、民間との保険契約及び国との補償契約で補填される制度がある。R&Iは、「同制度が、今回の福島第一原子力発電所の事故に関しても適用される可能性が高いとみているが、損害賠償の総額、適用の範囲など、現時点では不確定な要素が多く、今後の動向から目を離せない」としている。

原子力発電に関する今後の国の方針を注視していく必要はあるものの、「事業の公共性、それに伴う様々な保護措置など、電力各社の格付を支えている基本的な要素に今のところ変化はないと考えている」(R&I)。

東京電力の格付も、こうした定性面の要素が支えになる。「当面の収支・財務の動向をウォッチするとともに、原子力発電所事故による設備の損害や、事故がもたらした被害に対する補償および負担などを注意深く見極め、格付に織り込んでいく」(R&I)。