これまで、東海道新幹線N700系成田エクスプレスE259系で提供されている列車内インターネットをレポートしたが、最後につくばエクスプレスの使い心地をお届けしよう。

建設当時からインフラを整備

つくばエクスプレスの列車内無線LANサービスは、TX-2000系のみで運用されている

東京・秋葉原からつくばを結ぶ首都圏で最も新しい私鉄「つくばエクスプレス」は、開業して約1年後に列車内インターネット接続サービスを開始して当時話題となった鉄道だ。無線LANサービスがすっかり浸透しているのか、筆者が計測のために乗り込んだ車両には、ノートパソコンユーザ4名、iPadユーザが1名同乗していた。

さて、都内はほとんど地下トンネルだが、全線でインターネットに対応している秘密は、地下区間を含み独自の無線インフラを整備し、それを車両に搭載されたネットワーク機器でWi-Fiに中継しているからだ。N700系では列車無線の余剰帯域を利用しており1編成で2Mbpsという制限があったが、こちらは独自であるため速度が期待できる。

プロバイダはNTT東日本と「フレッツスポット」とNTTドコモの「Mzone」に対応している。いずれも事前の契約が必要であり、特にMzoneは、FOMAユーザでない場合NTTドコモショップ店頭での契約が必要となる。なお、フレッツスポットは認証方式がPPPoEなので、iPhoneやiPadでは利用できないことに注意しよう。

利用にあたって気をつけるべきことは、東海道新幹線と同様にインターネット対応の車両とそうでない車両が混在していることだ。インターネット接続の機器を搭載しているのは、TX-2000系と呼ばれるタイプのみ。簡単に見分ける方法は、つくばまで直通する列車であること。インターネットに対応していないTX-1000系は、電源方式の違いにより守谷より北に乗り入れられないので、つくば直通はもれなくTX-2000系が運用されるのだ。

ホームはすべてホームドアを備えていて車両の区別がしづらいが、つくば行きであれば必ずTX-2000系だ

側面に書かれた型番を確認して、「TX-2xxxx」なら確実にインターネット対応車両だ

予想より途切れやすい

独自方式の専用インフラを使っているということなので、まったく途切れずコンスタントに高速なデータ通信を期待していたが、意外と不安定だった。通信速度のグラフでは、サンプルが駅ごとなので安定しているように見えるが、地下区間や地上区間に関わらず、通信できなかったり著しく遅くなる区間があった。

また、駅に停車しているとホーム上のアクセスポイントに切り替わってしまい、まれに列車が発車しても列車内のアクセスポイントに再接続しないときがあった。本来、公衆無線LANのアクセスポイントは電波状況をきっちり把握したうえで設置するものだが、動くアクセスポイントがあるとそういうわけにもいかないのだろう。

地上設備とリンクできれば、123km/h(ほぼフルスピード)で走行中でも400KB/sほどの速度が出た

ところが、さすがはバックボーンがNTT系だけあって通信速度の平均が高速だった。総受信量で比べると、成田エクスプレスでは1時間20分で780MBだったが、こちらは45分で715MBにもなった。概ね2倍の速度が出ていることになる。

累積の受信データ量は、最終的に45分間で約715MBに達した。新幹線は2時間30分で226MB、成田エクスプレスは1時間20分で約780MBだったので、3列車中で最速 ※拡大画像はこちら

駅間ごとの平均速度と最大速度をグラフにした。無通信区間がないように見えてしまうが、1、2分程度の圏外が数カ所あった ※拡大画像はこちら

ちなみに、Mzoneのユーザ認証はインターネットに接続していないとできない。つまり、乗り込んでからつなごうと思っても、地上設備との通信が途絶えているときにはログインできないことになる。そのため、なるべく乗車前にホームのアクセスポイントでログインしたほうが確実だろう。