自分へのご褒美ビール「ザ・プレミアム・モルツ」

「ちょっと特別な日のビール」。そんなキャッチコピーがぴったりなサントリーのプレミアムビール「ザ・プレミアム・モルツ」。モンドセレクションで3年連続最高金賞を受賞という偉業を成し遂げ、今でこそ"自分へのご褒美ビール"や贈答用としても定着しているが、初めて飲んだときはこれまでのビールの概念を覆すような味わいで衝撃的だった。

一言で表現するなら「華やか」。ホップの香りがふわっと広がり、キレのいい苦味が広がる。心地のよいコクや旨味も持ち合わせ、とにかくハレの日にぴったりな味わいだ。リッチな味わいなので、「夏だ! ビールだ!!」というわけでもなく、季節を問わず1年を通して楽しめるという存在だ。

東京・府中にある「サントリー武蔵野ビール工場」

そんなビールだけあって、素材も厳選。ホップは香り高いチェコやドイツ産アロマホップを100%使い、選りすぐりの二条麦芽を用いている。とはいえ。ビールの約90%は水でできている。「ザ・プレミアム・モルツ」は、地下深くからくみ上げた天然水を仕込み水に使うため、工場の立地は非常に重要なポイントとなる。

そこで工場の立地を調べてみると、京都、熊本ときて、東京都内にもある。しかも府中市。意外にも都心部からのアクセスがよい場所にビール工場があったのだ。こちらでは工場見学も受け付けており、聞けば平日は主婦仲間、週末にはファミリー層が次から次へと訪れるといい、かなりの人気スポットになっている。

私たち取材班も、どのようにして「ザ・プレミアム・モルツ」がつくられるのかをこの目で確かめるべく、東京・府中の「サントリー武蔵野ビール工場」へ向かった。

都心からも近いビール工場

武蔵野ビール工場は1963年操業。2008年にリニューアルし、ビールづくりが学べる現在の工場見学コースが完成した。JR南武線・武蔵野線府中本町駅から徒歩10分強だが、京王線・JR南武線分倍河原駅からは無料のシャトルバスが出ているのでかなり便利。

見学コースは通常コースと「ザ・プレミアム・モルツ講座」などの特別講座があるが、まずは通常コースを体験。通常の工場見学は、基本的には毎日実施。所要時間は約1時間で、ガイド付きの工場見学と、お楽しみの試飲が含まれている。

通常コースでは、ビールづくりの工程に添って案内される。まずはビールの原材料について。先ほども述べたが、ビールにとって大切な水は、同工場の場合、通常の浅井戸よりもさらに深い深層地下水を100%使っているという。

麦とホップは現物を展示。麦は二条大麦で、麦芽の発芽状態が均一なものを厳選することで、麦本来の旨みを引き出しているという。麦芽を試食してみると、香ばしく、噛んでいるうちに甘みが出てくる。

ホップは写真のような「ペレット状」になって工場にやってくる

ホップは、華やかでエレガントな香りを出すため、ファインアロマホップを使用。香りが飛ぶのを防ぐため、収穫したのち乾燥、裁断、圧縮して「ペレット状」で運ばれてくる。そのペレット状の現物が展示されており、ちょっとツンと来るような独特の香りがする。ホップは農作物で当然のことながら毎年出来が違ってくるため、ビール技師が同じ味わいになるように配合調整する。大量生産されているビールとはいえ、微妙な調整という職人技が必要なのだ。

次は仕込み棟へ移動。棟へ入ると少し暑く、工場全体に漂っていた麦汁の香りも一層強くなる。ガラス越しではなく間近でタンクを見ることができ、そのスケールに驚くはず。ちなみに仕込み棟内は夏には40℃近くまで上がるという。

仕込みで使用されるタンクはこの通りの大きさ

独自製法を間近で

工程はと言うと、まずは大きな仕込槽の中で砕いた麦芽に水を加えて加熱。麦芽中のでんぷんを糖に変える。「ザ・プレミアム・モルツ」の場合、ここで一部の麦汁を2回煮沸する「ダブルデコクション製法」という独自の製法を行っており、これにより麦芽本来の旨みと深いコクを出す。

その後、殻を取り除くろ過槽を経て、撹拌、煮沸の槽へと移り、ホップの投入となる。そしてここでも「ザ・プレミアム・モルツ」のために開発した「アロマリッチホッピング製法」が採用されている。麦汁の煮沸開始直後にアロマホップを加え、さらに仕上げにファインアロマホップを加えるといった製法で、上品で華やかな香りがつくられるのだ。

次は発酵の工程に移り、麦汁に酵母を加えて低温で発酵させていく。酵母がイキイキと動いてくれる環境づくりも技師の腕の見せ所とのこと。ここで1週間かけて、麦汁がビールのもとである若ビールへと変わる。

昔使っていたタンクを再利用した通路だが、逆に近未来な雰囲気

貯酒コーナーへ移動する通路の壁には、昔貯酒に使われていたタンクが埋め込まれて、通路自体もこのタンクが使われている。ちょっと近未来な雰囲気。タンクは、現在ステンレス製を使っているが昔はアルミ製で、こちらの通路になっているタンクは、350ml缶でなんと9万4,000本分のビールをつくることができる! 「1日1本飲むと260年分。1日5本は軽いので、私なら一生かければ飲みきれるな」などとついつい考えてしまう……。

若ビールは次に貯酒タンクへ移され、熟成して深いコクと旨みを引き出したのちにろ過、ビールへと変わる。その後の缶・びん詰、箱詰めの工程まで見学し(一部映像のみ)、基本の見学コースは終わりとなる。