先週末の欧米市場

欧州株式市場は反落。ムーディーズ・インベスターズ・サービスが17日、アイルランドの格付けを「Aa2」から「Baa1」へと一気に5段階引き下げたことに加え、見通しを「ネガティブ」としたことで欧州債務危機が再び市場を覆う展開となった。これによりリスクに敏感な銀行株を中心に売り圧力が強まり、欧州主要株価指数は軒並み下落。英FTSE100では、医薬品大手アストラゼネカ(AZN.L)の新抗血栓薬ブリリンタの承認が、医薬品局(FDA)によって見送られたことも圧迫要因となった。

一方、高値警戒感の中、米国株式市場は米景気回復期待を背景に引き続き底堅い値動きが継続。特に米SPX500種は約2年ぶりの高値水準まで上昇した。ソフトウェア大手オラクル(ORCL.O)やカナダの携帯情報端末(PDA)大手リサーチ・イン・モーション(RIM)(RIM.TO) の業績が予想を上回ったことが好感された他、M&A絡みの商いも相場を下支えした。

一方、為替市場は、ドイツ経済指標が市場予想を上回ったことを好感し欧州タイムはユーロ買い優勢の展開へ。しかし、アイルランドの格下げ報道がなされると一転してユーロ売りが強まり、1.33ミドルから1.31前半まで一気に下落。欧州連合(EU)は、欧州安定メカニズム(ESM)創設に向け一歩踏み出したが投資家の不安心理を払拭することはできず、この問題の根深さを印象付けるユーロ売りとなった。 ] この影響はユーロ円にも波及しクロス円全体で円高圧力を強める要因となったものの、ドル円は日米の金利差を背景にドルが下支えされ、84.00を挟んだボックス相場は相変わらず、週明けのアジア時間を迎えようとしている。

本日の主要経済指標

・14:00 日本 : 10月景気一致CI指数(確報値)

・14:00 日本 : 10月景気先行CI指数(確報値)

・16:00 ドイツ : 11月生産者物価指数

・18:00 ユーロ圏 : 10月経常収支

・22:30 カナダ : 10月卸売売上高

・22:30 米国 : 11月シカゴ連銀全米活動指数

・24:00 ユーロ圏 : 12月消費者信頼感(速報値)

アジア時間の見通し

為替市場では、一時ドル相場を動かした米金利上昇に一服感が出始めている。

先週末の米10年債利回りは3.41%近辺から3.31%割れ、2年債利回りも0.64%台から0.589%まで低下する場面が見られた。米連邦準備理事会(FRB)による約20億ドル規模の国債購入やポジション調整による国債の処分も落ち着いてきたことが背景にあり、本日は米金利を主体とした値動きとなる可能性は低いのではないか。

そう考えると焦点はやはり欧州債務問題の動向だろう。

欧州連合(EU)首脳会議で、2013年半ば以降の欧州安定メカニズム(ESM)創設のため、EU基本条約の改正に合意した。また、欧州中央銀行(ECB)は創設してから初めてとなる増資(107.6憶ユーロ規模)に踏み切ることを決定。

しかし、これらの決定も投資家の不安心理を拭い去ることはできず、ユーロの上値は重い。実際、先週末の欧州債券市場では、ECBによる国債買い入れ観測があったものの、10年物アイルランド国債とドイツ債利回りは一時565bpまで上昇。同様にポルトガル債、スペイン債とドイツ債の利回り格差も拡大傾向が続いた。

この投資家の不安心理はユーロドルへも波及しており、対ドルでは目先のサポートラインと思われた1.320をあっさりと破られ得る始末。一方、対円でも110円ミドルをブレイクしていることから、心理的ライン110.00が再び下値の焦点として浮上してきた。このラインを破られるようだと、クロス円全体へもその影響が波及する可能性が高まるため、本日はユーロ円の動向に注目したい。

そして注目のドル円相場だが、ユーロドルでのドル買いにより、84.00を挟んだボックス相場となっているものの、84円ミドル以上では実需の売りオーダーが並んでいることに加え、次のレジスタンスポイントが心理的節目85.00ということを考えるなら、上述したユーロ円の動向次第で、ドル円にも円高圧力がかかる可能性がある点に注意しておきたい。レンジは83.00-84.50。83.00をブレイクするようだと82円ミドルレベルが次の下値ターゲットとして浮上する。

米景気回復期待を背景にしたリスクテイクが株式市場で継続している。しかし、本日の日本225種は、明日の日銀金融政策決定会合や週半ばの米経済指標を見極めたいとの思惑から、米株に追随して上値追い、という展開の可能性は低そうだ。前週まで上昇を牽引し、10月から12月第2週までで約1兆1200億円の日本株を買い越した海外勢が本格的にクリスマス休暇に入ることも相場の圧迫要因となろう。

ただ、下値も底堅く推移する可能性が高い。とかく海外の要因に左右されがちな日本225種だが、その外部環境は必ずしも悪くないからだ。中国の金融引締め懸念は根強いものの、今のところ市場がメインの材料と見る向きは感じられない。むしろ米国内で焦点となっているブッシュ減税の延長法案が米下院で可決されたことでイベントリスクがまたひとつ消化され、相場は米金融緩和を背景にした流動性相場が継続する見通しが強まっている。 また、為替市場では、クロス円の値動きが若干荒いものの、ドル円は84.00のラインを挟んでのボックス相場となっていることも主力輸出株の支援要因となりそうだ、

一方、国内に目を向けても、法人税5%引き下げによるM&A等の投資活動が活発化するとの期待感や日銀による指数連動型上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(J-REIT)の買い入れもスタートしており、目先のサポートポイントと思われる10200円を一気に割り込む展開とならない限りは、10200-10400を中心レンジとした売り買いが主体となるのではないか。

ユーロドル 日足

日本225種株価指数 日足