West Village Investment(ウエスト・ビレッジ・インベストメント)は、今年10月4日より、日経225先物、TOPIX先物対応のトレードシステム『R5(アルゴ)シリーズ』(以下、「アルゴ」)の販売を開始した。ひまわり証券からリリースされるR5システムは、「R5バランス」と、エントリー条件を厳しくした「R5パッシブ」の2つのタイプのシステム。両システムは、ひまわり証券のシステムトレード用高機能ツール「トレードシグナル」の完全自動売買に対応している。

今回は、アルゴのロジックや考え方について、West Village Investment代表取締役の西村貴郁氏、取締役の岩本祐介氏にお話しを伺った。

「1トレードあたりの利益」拡大を目指し開発

「今回のR5も、2009年末までの日経平均データを使って開発し、2010年初頭からの実データを使ってフォワードテストを行いました。そして、10月4日から発売を開始しました」(岩本)。

その結果によると、日経225先物よりも、TOPIXの運用成績がいいという。

「TOPIXの方が、トレンドがでやすいという理由からです」(岩本)。「TOPIXにフォーカスされているということはありません。トレンドの出やすいTOPIXでの運用成績がいいシステムに結果的になったということであって、個別株や債券先物、FXにも適用できるシステムです。個別株については、検証結果を弊社サイトにも掲載していますので、ぜひご覧になっていただきたいと思います」(西村)。

West Village Investment代表取締役の西村貴郁氏

では、アルゴの特長はどこにあるのだろうか。

実は最近問題になっているのは、ここ1~2年、「日経225先物で利益が伸ばせない」という投資家の悩みが多くなってきていること。市場が渋い動きとなり、ボラティリティが小さくなってきているため、多くのトレードシステムが、勝率は変わらないものの、1トレードあたりの利益が小さくなってきている。この問題を解決することが、R5の開発の主眼となった。

「トレードというのは、ポジションをもつという『入り口』と、利益確定、損切りという『出口』の両方があって、トレードが完結します。今回は、出口戦略に徹底的にこだわりました」(西村)。

「入り口=エントリー」は、シグナルに従った買いと売りの2種類がある。ところが、「出口=決済」は5種類が用意されているという。そのうちの二つは損切り絡みのもの。一つは通常の損切り、もう一つは「トレーリングストップ」(値動きに合わせて、自動的に逆指値の損切りラインを追従させていく。トレーリング価格がエントリー価格を超えてしまえば、利益が確定する)。

「時間」「早期型」「可変型」の利益確定戦略を用意

利益確定に関するものは3種類。「時間エグジット」「早期型エグジット」「可変型エグジット」の三つだ。このうち、後者の二つは理解しやすい。「時間エグジット」は、デイトレードなので、市場が閉まる時間までポジションを持っていたら自動的に手仕舞うというもの。

また、「早期型エグジット」は、前場と後場でトレンドが急変したことを察知した場合、利益を確定してしまおうというものとなっている。

「日経先物の場合、前場と後場でトレンドが大きく変わるということがよくあります。こういう場合、後場の早い段階でトレンドが変わったことを察知したら、早めに中程度の利益で脱出してしまおうという考え方です」(岩本)。

West Village Investment取締役の岩本祐介氏

問題は、「可変型エグジット」だ。

実際に裁量トレードをしている人は、エントリーよりもエグジットの方がはるかに難しく技術が必要であることを実感されているだろう。利益確定をし間違えると、1トレードで数千円、数万円の差を生じてしまう。

例えば、資金量やトレードスパンなどから、1トレードで1万円の利益を目標、あるいは希望しているとしよう。エントリーしてみたら、3,000円の利益が乗ってきた。ここで、決済をして利益確定をすべきだろうか。答えはもちろんノーだ。目標の1万円にははるかに及ばない。しかし、よくあるのが、そこからトレンドが変わり、どんどん評価益が縮小し0円に近づいていってしまう。「これでは損失が出てしまう」と、あわてて決済をし、結果数十円の利益に終わるというパターン。勝ちトレードというよりも引き分けトレードであり、利益確定というよりも損失の出なかった損切りの気分だ。

では、利益は小さくても確実に利益を取ろうと方針を変えて、3,000円で利益確定をしてしまうと、その後はぐんぐん利益が伸びて数万円の利益となる「ビッグトレード」を取り損なうということになる。

大きな利益を狙って、小さな勝ちトレードを引き分けトレードで終わらせてしまうようなことばかりをやっていると、損切り幅は従来通りなのだから、損益収支はジリ貧になっていくことになる。昨今の日経は、ビッグトレードが出づらい状況になっているので、その分、利益が減り、収支はマイナスゾーンに入っていくことになる。

TOPIX先物での「R5パッシブ」(左)と「R5バランス」(右)の資産曲線(※2005年9月~2010年8月までWest Village Investmentが検証。検証結果は過去のデータであり、将来の実績及び確実な利益を保証するものではない)

この問題を解決するために、よく使われるのがトレーリングストップだ。トレーリングストップとは、逆指値で入れた損切りラインを、更新されていく高値に追従させていく注文方法。たとえば、「直近の高値から50円幅」などという指定ができる。高値が更新されるたびに、その50円下に逆指値が移動する。利益がどんどん伸びて、50円分反転したら、自動的に決済がされるので、理屈では、伸びていく利益をほとんどめいっぱい取ることができる。

しかし、これもトレール幅をいくらにするかがとても難しい。トレール幅を小さくすれば、途中の瞬間的な乱高下に引っかかってしまい、利益が乗らないうちに決済されてしまうし、トレール幅を大きくすれば、最高値からだいぶ戻ったところで決済することになってしまう。相場の状況をよく読んで、トレール幅を微調整する技術がないと、なかなかうまくいかない。

直近のボラティリティを計算で予測する「可変型エグジット」

この「引き分けトレード」問題を、トレーリングストップとは、まったく別角度のアプローチから解決しようとしているのが、「可変型エグジット」だ。

「簡単に言うと、直近のボラティリティを計算で予測します。ボラティリティが小さいときは、小さい勝ちでも確実に拾いに行きます。ボラティリティが大きいときには、利益をできる限り伸ばして、大きな勝ちをとりにいきます」(西村)。

つまり、ボラティリティが大きいときは、大きく伸びて大きな利益がとれる可能性があるのだから、すぐには利益確定せず、引っ張れるところまで引っ張る。ボラティリティが小さいときは、小さな利益でも相場が反転し始めてしまう可能性が高いので、早めに利益を確定してしまう。

ある意味、理想的な決済の考え方だが、ほんとうにそんな魔法のようなことができるのだろうか。次回は、アルゴのロジックを、この可変型エグジットに焦点を当てて、お話を伺う。

West Village Investmentの西村貴郁代表取締役と岩本祐介取締役 システム・アナリストへのインタビュー記事はこちら!!