対照的な二人が出会い、トレードシステムが誕生

日経225先物を扱うトレードシステム「順張り職人225」「逆張り職人225」を開発したWest Village Investment(WVI)の代表取締役、西村貴郁氏は、アーサー・アンダーセン、KPMGなどを経て現会社を設立した、絵に描いたような"できる"ビジネスパーソン。一方で、同社取締役 システム・アナリストである岩本祐介氏は、野村證券で営業職を務めた後、退社して個人投資家として裁量トレードを行い、うまくいかなったという経験をもつ苦労人だ。

West Village Investment 代表取締役、西村貴郁氏

この極めて対照的な二人が出会ったときに、トレードシステムが生まれた。西村氏の先を見通す先見性と、岩本氏の積みあげてきた経験が「順張り職人225」「逆張り職人225」を作り上げたといっても過言ではない。

「野村證券を退社後、個人投資家として裁量トレードをやりましたが、思うような成績はあげられませんでした」(岩本)。岩本氏が個人投資家になったのは、デイトレードがブームになったり、ナスダック市場がにぎわっていたころ。

「デイトレードは判断が速い。ところが、あらかじめ決めていたルールを私の場合は守れませんでした」(岩本)。本来なら、この価格になったらロスカットを入れるというルールを決めて、相場に臨むべき。そんな基本的なことは岩本氏も当然分かってはいるが、いざその場になってしまうと、ロスカットを入れずに粘ってしまうことがあった。

「よく小さく負けて、大きく勝てといいますが、私はそのまったく逆。小さく勝って、大きく負けることを繰り返していた。典型的な成績のよくない個人投資家でした」。

裁量トレードで「人間の心の弱さ」学ぶ

幸いにして、岩本氏は取り返しのつかない損害を受けることはなかったが、そのままやっていても「いずれ"ドカン"とやられることは目に見えていた」(岩本)。そこで岩本氏は必死に"脱出口"を探す。そこで出会ったのが、米国SP500市場でシステムトレードをやっていた人物だった。岩本氏はその人物に師事をして、システムトレードを一から学んでいった。岩本氏が裁量トレードで学んだのは、人間の心の弱さだ。

West Village Investment 取締役 システム・アナリスト 岩本祐介氏

「もし人間が合理的な判断をできるのだったら、価格が下落した株を塩漬けにするなどということはおこらないはずです。人は誰でも損失は先延ばしにして、利益は早く確定したがる。これは人間の本性ではないでしょうか」(岩本)。

この人間の本性を補ってくれるツールとして、岩本氏はシステムトレードに惹かれていく。以後、岩本氏はシステムトレーダーとして成績も上向いてきた。そのころ、西村氏と出会い、トレードシステムを販売し、システムトレードを広めたいという点で意見が一致する。

職人シリーズの「順張り」「逆張り」とは?

West Village Investmentの職人シリーズには「順張り職人」「逆張り職人」の2種類がある。この「順張り」「逆張り」とはどういうことなのだろうか。「順張りというのはトレンドに乗るということです。ですから価格が上昇したら、もっとあがるだろうと考えて買う。下降したらもっと下がるのではないかと考えて売る。これが順張りです」(西村)。

『順張り職人225』

現物株をやられている人はこういった順張り思考法をとる人が多いのではないか。どんどん株価が上がっているときに、「こんなに株価が上がっているということは、この企業はどんどん業績を伸ばしている。もっと上がるのではないか」と考えて株を買っておく。どんどん株価が下がっているときには、「こんなに株価が下がっているということは、この企業は危ないのではないか。倒産でもされたら紙くずになってしまう。怖い」と考えて、株を売って手放す。これが「順張り」だ。順張りが狙っているのは、「上昇トレンドで買い、天井をすぎ、下降トレンドに入ったらすぐに売る」という点だ。つまりわかりやすくいえば"大天井"狙いだ。

では、「逆張り」というのはどういうことだろうか。気をつけていただきたいのは、順張りのまったく裏返しというわけではない点だ。まさか、そんな単純な考え方の人はいないと思うが、「順張り派が買う局面にきているから、逆張り派の私は売りだ」という同じタイミングで裏返しの行動をとったのでは、ただ大損をしていくだけのことになってしまう。逆張りが狙っているのは、「下降トレンドで買い、大底をすぎ、上昇トレンドに乗ったところで売る」という点だ。分かりやすくいえば"大底狙い"だ(これに加えて、順張り、逆張りとも売り→買いのパターンもそれぞれある)。

最も大切な点は、「順張り」「逆張り」は、裏表の戦略ではなく、トレードする期間が異なっているということだ。相場が上がって下がるという富士山の形をした山があるとき、順張りがトレードするのは、麓(ろく)で買って頂上を越えたところで売る、つまり山の手前側でトレードを行う。一方で、逆張りは頂上の少し手前で売り、反対側の麓にまで下がってきたところで買い戻す。山の向こう側でトレードを行う。トレードするタイミングがそれぞれ、山の反対側にあたり、まったく異なっている。

「順張り職人」「逆張り職人」の組み合わせが有効

「できれば、順張り職人、逆張り職人の両方を組み合わせて使っていただきたい」(西村)というのは、一番の理由は複数のシステムを使うことにより、リスクを分散させるということにあるが、それぞれトレードするタイミングが異なるので、一つの山、あるいは一つの谷で、東側と西側の2回利益を生み出すチャンスが生まれることにある。

「できれば、順張り職人、逆張り職人の両方を組み合わせて使っていただきたい」と話す西村氏(左)

「日経225の先物市場は、前日の終値と当日の始値に差があることが多いのです」(岩本)。これはだれでも知っていることだろう。日本市場が閉まっている夜、米国や欧州の市場は開いていて、そこでさまざまな経済現象が起きているからだ。その状況を受けて、日本市場が開いた瞬間から買い一辺倒あるいは売り一辺倒で始まっていくなどというのはよくある光景だ。

「前日の終値よりも高く始まって、その後も上昇トレンドが続く日、あるいは逆に前日の終値よりも低く始まって、その後も下降トレンドが続く日。こういう日は順張りが有利になります」。一方で、前日の終値よりも低く始まったが、反発をして急上昇をするような日、あるいは前日の終値よりも高く始まったが、下降トレンドに入ってしまった日には逆張りが有利になるという。言ってみれば「平時の順張り、乱世の逆張り」ということになるだろうか。

West Village Investmentの考え方は、「順張りが有利ですか、逆張りが有利ですか」という二者択一ではなく、「組み合わせることでポートフォリオを組む」ということだ。リスク分散にもなり、場合によっては一つの局面で往復ビンタのように積極的に二度利益を狙いにいく。

このような発想は、まさしく岩本氏の過去のつらい経験から生まれてきたものだろう。順張り職人、逆張り職人のロジックにも、教科書で学んだ理論ではなく、経験を積んだプロのアナリストの目にしか見えないロジックが詰めこまれているという。次回では、この「順張り職人225」「逆張り職人225」の内容についてご紹介していく。