To Doを書き出すだけではダメ!

――To Doを付せんに書き出すのはポピュラーな手法ですが、小室さんはさらに「仕事マトリックス」という図と併用するよう提唱していますね

仕事の能率を上げたいのであれば、単にTo Doを書き出すだけでは不十分です。なぜならTo Doはそれぞれ緊急度・重要度が異なるので、しっかり優先順位を見極めないと、いつまでたっても重要な仕事に取りかかれないという状況に陥ってしまうからです。

そこでワーク・ライフバランス手帳ではTo Doを付せんに書き出し、それらを

  1. 緊急かつ重要
  2. 緊急ではないが重要
  3. 緊急だが重要ではない
  4. 緊急でも重要でもない

という四つのカテゴリーがある「仕事マトリックス」に振り分け、自分の仕事を整理することをすすめています。この「緊急・重要」のマトリックスは、コンサルタントの間ではとても有名な図ですが、一般のビジネスパーソンには意外と知られていないようです。効果てきめんなので、ぜひ使ってみてください。

――仕事マトリックスを使う際に気をつけるポイントはありますか?

すべてのTo Doを「緊急かつ重要」に貼り付けないことです。冷静になって内容を吟味すれば、期日までに余裕があったり、それほど重要でなかったりすることがわかります。To Doを適切なカテゴリーに置いて、できるだけ平準化するようにしましょう。

また、この作業は同じチームの人たちと一緒に行うとさらに効果が上がります。本来チームは各人の仕事の分量が均等でなければいけないのですが、極端な偏りがある場合も少なくありません。そんなときは仕事をたくさん抱えている人のTo Doを別の人が引き取ったり、「緊急でも重要でもない仕事」三つと「緊急で重要な仕事」一つを交換したりしてお互いに助け合うことができます。

――仕事マトリックスには、自分の仕事の傾向が表れそうですね

ほかの人に比べて「緊急かつ重要」のTo Doが多いのであれば、仕事の段取りに問題があるか、人に仕事を任せられない抱え込み体質であるということです。後者の場合は積極的に他人の協力を仰ぎ、仕事を分散させたほうがいいでしょう。

今あるTo Doの中で、「期日交渉できるものはないか」と考えることも大切です。自分では「緊急かつ重要」と判断して1のカテゴリーに置いていても、相手に確認してみたらそれほど急いでいなかった、という場合もあります。「仕事マトリックス」は自分の思い込みや癖を改めるきっかけになると思います。

――わたし自身、「緊急ではないが重要」に置いたTo Doが手付かずのままになってしまいがちです。どうすれば解消されるのでしょうか

おそらく一つのTo Doが大きすぎるのだと思います。例えば数カ月かかるようなプロジェクトをそのまま置いていませんか? このTo Doを処理したいのであれば、全体をいくつかに分解してそれぞれに期日を設けてください。すると人に任せられる部分や、今すぐ取りかかれることがはっきりするので、それを足がかりにプロジェクトを前進させることができるはずです。

あなたの「充実してる」はホンモノですか?

――ご自身の手帳では、ワークとライフの充実度を6段階で評価する「課題発見シート」も提唱されていますよね。これはどう使えばよいのでしょうか?

自分のワークとライフがどういう状況にあるかを、冷静に分析して考える人はまだ少ないと思います。それどころか一日中仕事に追われている人ほど、「とても充実している」と思い込む傾向があるようです。

そんな人が課題発見シートを書くと、ちょっと見栄を張って(笑) ライフの充実度を3や4にするのですが、「では具体的に何をしましたか?」と尋ねるとジョギングだけだったり、ワークがらみの勉強会や交流会だったりします。

課題発見シートは仕事中毒の状態から抜け出し、理想的なバランスがとれた自分になるためのものです。現在の自分が理想とかけ離れているのであれば、これからどうすればいいかを考え、ただちに生活パターンを改めてほしいと思います。またライフが1でもワークが4ならいいと考える人も多いのですが、二つを足して帳尻を合わせるのではなく、両方を底上げしようとすることが大事です。

――ワーク・ライフバランス手帳には、1年の休暇予定を立てる「ホリデイリスト」というユニークな機能もありますよね。これはどのように活用すればいいのでしょうか?

実は休暇ほど早くから計画しておかないと楽しめないものはありません。ですからホリデイリストを使って計画を練るのであれば、お正月休みに行うのが一番いいと思います。もともと1年の抱負や計画を立てるのに適していますし、家族も家にいるので、それぞれの要望をとりまとめることができます。

もちろんホリデイリストに書き込むだけではなく、それにともなう諸手続きもきちんと手帳に落とし込んでください。例えば5月の連休に旅行に行くのであれば、3カ月前には旅行代理店に足を運ばなくてはいけません。ほかにも情報収集をしたり、必要なものをそろえておいたりと、さまざまなステップがあります。旅行は準備している段階でいろいろと想いをめぐらすほどに楽しみが増すので、旅立つまでの期間も大切にしたほうがいいと思います。

また1年間の旅行計画を立てておくと、たとえ仕事が忙しくても「来月は旅行に行くんだから、もうちょっと頑張ろう」と思えますよね。こんなふうに楽しいことを先に置いて仕事に対するモチベーションを維持するのも、日々を充実させるテクニックの一つです。ワークもライフも楽しみたければ先手を打つ。これが鉄則です。



次回は、「憤りリストでプレゼンを上達させる」についてうかがいます。

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INTERVIEWER PROFILE : 早川洋平 / KIQTAS(キクタス)
2008年に始めた著者インタビューポッドキャスト「人生を変える 一冊」をきっかけに起業。
現在は、企業や教育機関、公共機関などにポッドキャストを中核としたサービスを提供している。インタビュアーとしても精力的に活動、渡邉美樹さん、堀江貴文さん、石田衣良さん、寺島実郎さんらこれまでにインタビューした人物は1,000人を超える。
KIQTAS(キクタス)ホームページ
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