『Mad Science』の著者に聞く!

2002年のイグノーベル賞で化学賞を受賞したセオドア・グレイ氏。『Mad Science──炎と煙と轟音の科学実験54』(オライリー・ジャパン)を執筆するなど科学者としての一面を持つが、本業は世界中で使われている数式処理ソフト「Mathematica」の開発者でもある。今回はそのグレイ氏の来日を機に、科学実験や本業との関わりについてお話を伺った。

セオドア・グレイ氏。米「Popular Science」誌でコラム「Gray Matter」を連載中。科学技術計算用ソフト「Mathematica」の開発会社Wolfram Researchの共同設立者であり、役員を務める。"元素コレクター"としても知られ、「世界一美しい元素周期表」を制作・販売するほか、元素や周期表を集めたWebサイト「The Photographic Periodic Table of the Elements」を主催している

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まずは実験からスタート


グレイ 最初に実験を見てほしい。「いたずらスプーン」という実験だ。(本書21ページ)

まったく普通のグラスに、まったく普通のお湯が入っている。グレイ氏がそのお湯をスプーンでかき混ぜると……。スプーンの先の部分がみるみるうちにグニャグニャに溶け、ポタポタとグラスの底に溜まりはじめた。しばらくすると、スプーンの先は完全に溶けてなくなり、グラスの底に銀色の金属が溜まっている

グレイ ここでお湯を捨てよう。底に溜まった金属が出てくるよ、ほら。

底に溜まった金属を渡された。メダルのような円板になっている。冷えたせいか、とても堅い

グレイ これは、低温で液状になる合金で作ったスプーン。インジウム・ビスマス・スズの合金で、摂氏53℃で溶けるから、コップの中のお湯でも溶けるんだ。水銀のような毒性がないのはいいんだけど、インジウムが高いんだよ。材料費はこれ一つで7~8ドルもかかる。もったいないので、お湯で溶かしてまた成型しなおすんだよ(笑)。……次ページへ