――選曲において、霜月さんのチャレンジとは別に、ファンからのニーズ、要望に応えているところもありますか?

「もちろんそれを意識してのことかもしれませんが、いつものカラーの曲も当然入っています。歌い手としては、そこにとどまりたくないという気持ちもありますが、求められているものを出していくということも重要ですからね。私のカラーというのは、もちろん自分が好きだからそういうカラーになっているわけで、それはそれで大事にしているものではあります。ただ、作り手、アーティストとしてちゃんとカラーを持っていることは重要なことだと思っていますが、歌い手、表現者としては、いろいろなことを表現できることが大事だと思っていますし、そこは成長し続けたいと思う部分ですね。せっかくいろいろな方の歌を歌ったり、タイアップでいろいろな曲を歌わせていただいたりする機会があるのなら、同じような曲しか歌えないボーカリストよりも、やはりいろいろな世界にあわせて自分を表現できるような表現者でありたいという気持ちが強いですね」

――そういう意味で、ワークスアルバムは、いろいろな霜月さんに会えるアルバムという位置づけになりますね

「こういったタイアップの作品に関わるうえで、一番大事なのは、その世界観にあっていることだと思うんですよ。結局、私自身を押し出すのではなく、その世界観の中の一部にしかならないわけですから、その世界を好きな人が気に入ってくれることが一番大事なのであって、実際、ゲームの世界観やシナリオにあっているというところで支持してくださる方も多いわけですし。主題歌を歌う以上、自分はこういう歌しか歌えないからといって、その世界観にあわない歌い方をするよりは、いろいろな世界観にあわせて、柔軟に歌える歌い手でありたいですね」

――ちなみに今までいろいろとやってきた中で、この引き出しだけはなかったというものはありますか?

「たぶん、自分から進んでできないと思うのは電波系ですね。もちろん、そういった電波ソングに近いものを歌ったこともありますが、あまり自分の引き出しにはないかなと思います。あと、求められているものが、声質的な部分で"パワーボーカル"だったりすると、それは声の部分だけにどうしようもない問題ですよね。たとえば、パワーボーカルにあいそうな曲だけど、私が歌うことによってどうなるか? といったチャレンジなら楽しいと思うのですが、実際に求められているものが、"もっと太い声で"とかになってしまうと、それはちょっと待ってくださいという感じですよね。そこはもう表現でカバーできる範囲ではないですから(笑)」

――それでは少し話を変えて、ジャケットについてお伺いします。今回のジャケットも前回に続いてTivさんのイラストになっていますね

「ジャケットについては、完全に私がディレクションからやっています。Tivさんとは昔からの付き合いなのですが、今回も実を言うと、『音のコンパス』のときと同じキャラクターで書いてもらっています。このキャラクターは、『音のコンパス』のときに、私の声のイメージでキャラクターを起こしてくださいといってTivさんに書いてもらったキャラクターで、何のひねりもなく、『コンパスちゃん』という名前が付いています(笑)。今回のアルバムを作るに当たり、ジャケットのコンセプトをどのようにしようかと考えたときに、『導きのハーモニー』というタイトルにあわせて、登場人物であるコンパスちゃんも何かしらの経緯を経て、『導きのハーモニー』の気持ちにたどり着くような話を作ってしまおうと、私の中で勝手に設定を作ったんですよ」

「導きのハーモニー」のジャケットイメージ

――コンパスちゃんのキャラ設定ですね

「コンパスちゃんはこういう経緯で旅をしていて、こういう音楽学校のある町にたどり着き、学校に入ってこういう学科に通っている仲間が2人できて、仲良くなって、その仲間と一緒に音楽を奏でることで、『導きのハーモニー』の気持ちに繋がっていく…みたいな。そんなストーリーを勝手に作って、それを全部Tivさんに投げて(笑)。ジャケットにはコンパスちゃんのほかに男の子と女の子の2人が出てくるのですが、もちろんこの子たちにもちゃんと設定があって、それを全部Tivさんに渡して、こういうジャケットでお願いしますみたいな感じで発注しました」

――小説の挿絵を頼んでいるみたいですね

「そんな感じですね。挿絵を描いてもらっている感覚に近いかもしれません。ただ、ジャケットのシチュエーションについてはお伝えしているのですが、細かい部分はけっこうお任せになっています。Tivさんの場合は、通じるところが多いのか、お任せでも本当に私のイメージに近いものを返してくれるんですよ。そういう意味では、Tivさんともハーモニーを奏でている感覚がありまして、絵が上がってくるたびに私のテンションも上がっていきました(笑)」

――これまでから、ワークスアルバムのジャケットは、ファンタジーの中でも、日常というか、ほのぼのとした牧歌的な感じになっていますよね

「最初の『あしあとリズム』で、武田みかさんという方にイラストをお願いしたときも、私の声や歌のイメージで書いてみてくださいってお願いしたのですが、そうするとだいたいは明るい系のイメージになるみたいですね。実際、私が言いたいメッセージは基本的にポジティブなもので、作品自体がそうでない限りはネガティブな方向には行かないので、明るめのライトファンタジーで、しかも日常的なカラーになるのかもしれません」

(次ページへ続く)