『トランス・フォーマー』シリーズで知られるマイケル・ベイ監督のプロデュース最新作『ホースメン』が10月24日より公開される。現場に「COME AND SEE=来たれ」という謎のメッセージが残されていた奇妙な猟奇殺人が発端となり、次々と殺人事件が起こるサイコ・サスペンス。事件を捜査する刑事をデニス・クエイドが、猟奇殺人鬼をチャン・ツィーが演じる。そして、監督を務めたのはジョナス・アカーランド。PV界の巨匠でもあり、前作『SPUN スパン』では斬新な映像が話題となった監督に今回お話を聞くことができた。

ジョナス・アカーランド監督

――本作はチャン・ツィイーが初のシリアル・キラーに挑戦したことで話題の一作ですが、彼女と仕事をした感想はいかがですか?

「素晴らしい体験だったよ。彼女に関しては、いいことしか言えないよ(笑)。彼女ほどカメラの前で存在感を出せる女優と、僕は今まで一緒に仕事をしたことがなかった。彼女は撮影のためにニューヨークに引っ越して来て家族とアメリカに住み、最初はそれほどでもなかった英語が最終的にきちんと話せるようになった。彼女ほど熱意を持って現場に来てくれる俳優も初めてだったよ」

――殺人鬼を演じるチャン・ツィイーはいままで誰も観たことがなかったので、彼女は女優として新境地を開拓したと言えそうですね。

「そうだね。彼女はセットに入るとキャラクターに入り込み、まったく別人のように変わったよ。キャラクターをきちんと理解して、熱意を持って演じていた。そして、セットから離れれば、本当にまた別人に戻るのさ。僕らはカナダで撮影していて家族のように過ごしていたけど、彼女はとてもパーティーが好きで、楽しむことが好きな女の子だった。クリスティンとはまったく違う女性だよ(笑)」

――本作はジャンルとしてはサスペンス・スリラーに分類されると思いますが、監督はもともと興味があったジャンルなのですか?

「実は撮影中に方向性がどんどん変わっていったけど、もともとサスペンス・スリラーにはすごく興味があったよ。ただ、僕個人としては、ジャンルとしてのサスペンス・スリラーというよりも、"ドラマ・スリラー"と表現したほうがいいかもしれないと思っているよ」

――今回で長編映画は『SPUN スパン』(2002年)に続いて2本目ですよね。2本撮ってみて、映画監督としての意識など何か変化は?

「実は一度にいろいろなプロジェクトを進めていくことは、僕にとっては普通のことなのさ。今回の『ホースメン』のような長編映画になると、比較的深くテーマなどを掘り下げることになるので、長時間を費やして作業をすることは大好きさ。それに、いろいろなプロジェクトをやると、気分的にリフレッシュされる。大きなプロジェクトに対して新しい気分で取り組めるというメリットもあるのさ」

『羊たちの沈黙』のレクター博士を彷彿とさせるチャン・ツィイーの怪演が光る

――『SPUN スパン』に比べ、映像的に凝った演出は抑え気味だったような気がしますが、その狙いは何ですか?

「抑え気味という表現はネガティヴな言いかただと思うけど、今回はこの映画の持っているテーマを確実に伝えるために、一番いい方法を採ったまでさ。前作の『SPUN スパン』では、ちょっとショッキングで印象に残る映像、強い色使いやバックグラウンドに流れる音楽などが作品にとってふさわしかっただけで、(その演出が)今回の『ホースメン』にはふさわしくないと思っただけさ」

――最後になりますが、日本の映画ファンの皆さんに向けて、アカーランド監督から何か一言、メッセージなどお願いいたします。

「この映画のテーマの中心にあるのは家族です。日々子どもたちに向かってきちんと話をするということ、無視しないこと、そして子どもたちが親と話すということ。そういうメッセージがサブとして入っています。仮にそのメッセージが伝わらなくても(笑)、ストーリーが素晴らしいので、エキサイティングするとは思うけど、家族の大切さは世界中のどこにでも伝わっていくものだと思います」

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