さっそく、この店の定番で一番人気の「Battered Haddock and Chips」 をオーダー。フィッシュ・アンド・チップスに使われる魚は、イングランドの多くの地域ではコッド(cod)が主流だが、ここスコットランドではハドック(Haddock)が一般的。どちらもタラの一種である。

その日入荷された魚介類を使ったメニュー。いわゆる「本日のオススメ」

コップには店内で真っ先に客を迎えてくれる、この店のマスコットが

ちなみにバター(Batter)というのは「衣」のこと。この店ではその日入荷されたハドックの状態によって、衣の材料の分量や揚げ具合を「感覚で」調整するのだという。この職人技が出来るのは、オーナーのロバート・スミス氏を含めて3人のシェフだけだそうだ。

慣れた手付きで魚を揚げていく、オーナーのロバート・スミス氏

明るい店内で、食事を愉しむ人々

オーナー夫人のアリソンに話を伺っているうちに、出来立てアツアツのフィッシュ・アンド・チップスがテーブルに運ばれてきた。ケチャップ、マヨネーズやタルタルソースも付いてきたが、「レモンとモルト・ビネガーが一番よ! 」と、アリソン。

これがイギリスでナンバーワンの「フィッシュ・アンド・チップス」!

食してみると、外はカリっとしているのに中はしっとり。これまでイギリス各地でフィッシュ・アンド・チップスを味わってきた筆者だが、これほど軽い口あたりの衣のフィッシュ・アンド・チップスは正直初めて! 冷めてくるとベタっとしてしまいがちな衣であるが、食べ終わるまでカリカリだったのには感動を覚えた。

その軽い口あたりの衣のせいか、ボリュームの割にはちっともお腹が重たくならず、おいしくないフィッシュ・アンド・チップスだと途中で飽きてしまうのだが、飽きることなくペロリと完食。毎朝アバディーン近くの漁港まで新鮮なハドックを仕入れに行っているそうだが、魚そのものというより魚と衣、揚げ方のバランスにそのおいしさの秘密があるのではないか、という気がした。

オーナー夫人のアリソン。店と加工工場の両方を切り盛りしている

No.1のフィッシュ・アンド・チップス店に選ばれたことに対して、「この業界への情熱が今回の賞に繋がったんじゃないかしら」とアリソン。店を持った当時からイギリスで一番のフィッシュ・アンド・チップス店になることを目指していたのだという。彼女によると、あのウィリアム王子も、セント・アンドリュース大学在学中には常連客の一人だったそうだ。その他、ハリウッドスターなど数々の著名人がこの店を訪れているという。今回わかったことは、大会のランキングはミステリーカスタマーの投票も兼ねた、"厳正な審査"の結果だということ!! これだけおいしければ、10位内にランキング入りした店も相当な腕前なのだろう。数々の名店がしのぎを削る同大会の次回開催が今から楽しみである。

店の目と鼻の先にあるヨット・ハーバー。夏にはここでフィッシュ・アンド・チップスを食べるのもよさそうだ

アンストラザーからはメイ島までのフェリーが発着する

【アクセス情報】
アンストラザーとその行き方

アンストラザーは古くから漁村として発展してきた町。ゴルフの聖地として有名なセント・アンドリュースに近いこともあり、急速に観光地化が進んだが、今でも観光客の90%はフィッシュ・アンド・チップスを目当てにやってくるという。なかでも多いのが、セント・アンドリュースでゴルフを堪能した後、腹ごしらえにアンストラザーでフィッシュ・アンド・チップス、というパターンなのだそうだ。 行き方は、スコットランドの首都エディンバラからはセント・アンドリュースまで出て、そこからバスで向かうか、エディンバラからアンストラザーまでの直通バスを利用する。エディンバラからアンストラザーまでの間、フォース湾沿いに小さな漁村がいくつも点在するので、レンタカーを手配しそれらの漁村に立ち寄りながらゆっくりとアンストラザーを目指すのもオススメである。

店のすぐ側には、「スコットランド漁業博物館」がある