──今回、番組で紹介されたオペラハウスやウルル(エアーズ・ロック)などは有名ですが、ウィランドラ湖群地域は知りませんでした。その後のラインナップを見ても、あまり聞いたことがない世界遺産が入っていますね。
鶴谷「現在、世界遺産は878件ユネスコに登録されています。NHKではこれまで500件ほど取材していますが、この番組では日本人に馴染みのない遺産も取り上げていきたいと考えています。ウィランドラ湖群地域は先住民アボリジニの聖地であり、今回その他の世界遺産とあわせて紹介することで、より深くオーストラリアの歴史、文化が伝えられたと思います」
──確かに、それらの世界遺産を訪ねながら、オーストラリアの先住民と移民の歴史について改めて知った気がしました。ところで、鶴谷さんがこれまで訪ねた世界遺産で印象に残っているところはありますか。
鶴谷「サハラ砂漠のタッシリ・ナジェールという場所に、旧石器時代の人が岩に描いた絵が残っているのですが、そこまで辿り着くのが本当にたいへんでした。とにかく暑く、厳しい道のりでした。持ち物もできるだけ少なくしなければならないのですが、『生きるために最低何が必要なのだろうか?』と考えましたし、オアシスの水のありがたさが心の底から実感でき、水があることがいかに贅沢なのかと思いましたね。そうしてようやく岩絵に出合うと、この絵を描いた太古の人々と対話している気分になりました」
──苦労があったからこそ、さらに印象的だったわけですね。
鶴谷「世界遺産だけではなく、そこに辿り着くまでの行程そのものにも大きな意味があるのだと思います。タッシリ・ナジェールの場合は、かなり異例かもしれませんが、しかしその他の世界遺産でも、途中の道のりや人々との関わりなどを経て、世界遺産に出合うという行程が大切なのではないでしょうか」
日本人は無類の世界遺産好き?
──毎日コミュニケーションズでは世界遺産検定を実施しているのですが、2級と3級あわせて、何千人という受験者がいます。日本人はほかの国の人より世界遺産に強く興味を持っていると思いますが、それはなぜだと思われますか。
鶴谷「非常にむずかしいですね。こちらが教えていただきたいくらいです(笑)。本当に日本人は、いろいろな世界遺産を訪ねています。先ほどのタッシリ・ナジェールでも日本からの旅行者に会って驚きました。理由はいろいろあるとは思いますが、何よりも世界遺産に登録されたということは、文化、歴史、自然などさまざまな角度から価値が保証されたということなので、ぜひ訪ねたいとみなさん思われるのではないでしょうか」
──かなりの数を巡っている人も珍しくはないようです。
鶴谷「四国八十八カ所めぐりのように、ひとつひとつクリアしていくのが日本人は好きなのかもしれませんね。国によっては、世界遺産に対してほとんど関心を持っていないところもあるので、おもしろいなと感じています」
──最後に、この春から番組がスタートすることについてコメントいただけますか。
鶴谷「旅に出かけることのできない方は、この番組で旅気分を味わっていただきたいですし、出かけることができる方は、取り上げた場所を訪ねるきっかけになってほしいと思います。やはり、現地に実際に行ってみると感動は違いますからね。
また、番組専用サイトなどで旅の情報も提供していきたいと考えています。これは少しずつ充実させて、書き込みもできるようにしたいですね。視聴者のみなさんが情報提供者となったり、知りたい情報がここで得られるようになるのが理想です。
普通の旅の感覚を大切にしているのは、先ほどもお話したとおりですが、テレビの『夢』として、普通ではできないことなどもお伝えしていきたいと思っていますので、どうぞこれからの放送を楽しみにしてください」
『世界遺産への招待状』放送内容(予定)
放送日 | 回 | 紹介国 | 取り上げる世界遺産 |
---|---|---|---|
3月30日(月) | 第1回 | オーストラリア | フレーザー島、ウィランドラ湖群地域、オペラハウス、ウルル |
4月6日(月) | 第2回 | フランス | モンサンミッシェル、ロワール渓谷、サンサヴァン修道院聖堂、リヨン歴史地区 |
4月13日(月) | 第3回 | グアテマラ/ホンジュラス | アンティグア市、キリグア遺跡、コパン遺跡 |
4月20日(月) | 第4回 | ギリシャ | アクロポリス、デロス島、パトモス島 |
4月27日(月) | 第5回 | マリ(アフリカ) | ドゴンの集落、トンブクトゥ、アスキアの墳墓 |