文部科学省は20日、2007年度の「ネットいじめ」が前年度比20.8%増の5,899件となったとする調査結果を発表した。いじめ全体で前年度比約24,000件の減少となる中、ネットいじめの増加ぶりが際立つ形となった。同省ではこうした事態に対応するため、学校・教員向けに、ネットいじめに関する対応マニュアル・事例集を作成。全国に配布する予定だ。

いじめ全体では減少も、ネットいじめは増加

文部科学省が行ったのは、2007年度の「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」。国公私立の小中高校などを対象に、暴力行為やいじめ、不登校などの実態を調べるために実施した。

これによると、暴力行為の発生件数は約53,000件と、小・中・高等学校のすべての学校種で過去最悪の件数を記録。

いじめについては、認知件数は約101,000件と、前年度(約125,000件)より約24,000件減少する一方、携帯電話などによる、いわゆる「ネットいじめ」は、前年度比1,016件増の5,899件となった。

ネットいじめのいじめ全体における割合も、前年度比1.9ポイント増の5.8%となった。

「早期発見・早期対応が必要」と明記

文科省では、こうした事態に対応するため、「インターネット・携帯電話でのいじめ等のトラブルに関する学校における対応マニュアル・事例集の作成に関する検討会」を設置。検討会はこのほど、「『ネット上のいじめ』に関する対応マニュアル・事例集(学校・教員向け)」を作成した。

『ネット上のいじめ』に関する対応マニュアル・事例集(学校・教員向け)概要(出典:文部科学省報道資料)

「第1編 マニュアル編」ではまず、ネットいじめの特徴について以下のように明記。

  1. 不特定多数の者から、絶え間なく誹謗・中傷が行われ、被害が短期間で極めて深刻なものとなる

  2. インターネットの持つ匿名性から、安易に誹謗・中傷の書き込みが行われるため、子どもが簡単に被害者にも加害者にもなる

  3. インターネット上に掲載された個人情報や画像は、情報の加工が容易にできることから、誹謗・中傷の対象として悪用されやすい。また、インターネット上に一度流出した個人情報は、回収することが困難となるとともに、不特定多数の他者からアクセスされる危険性がある

  4. 保護者や教師などの身近な大人が、子どもの携帯電話等の利用の状況を把握することが難しい。また、子どもの利用している掲示板などを詳細に確認することが困難なため、「ネット上のいじめ」の実態の把握が難しい

こうしたネットいじめの特徴を理解し、「早期発見・早期対応に向けた取り組みを行っていく必要がある」とした上で、ネットいじめを、(1)掲示板・ブログ・プロフによるもの、(2)メールによるもの、に分類。それぞれについて、掲示板・ブログ・プロフへの誹謗・中傷の書き込みや個人情報の無断掲載、チェーンメールなど、詳しい内容について述べている。

書き込み削除依頼の流れなど詳細に記述

その後、ネットいじめやチェーンメールへの対応策を提示。掲示板等への誹謗・中傷に対しては、(1)ネットいじめの発見/児童生徒・保護者などからの相談→(2)書き込み内容の確認→(3)掲示板などの管理者やプロバイダに削除依頼→(4)削除依頼しても削除されない場合、といった対応の流れを詳細に説明。

また、掲示板・ブログ・プロフやチェーンメールでの被害を防ぐための児童生徒への指導のポイントなどを記述している。

さらに、こうした対応を充実させるための、情報モラル教育の充実と教員の指導能力の向上に関する基本的な考え方を説明。保護者への啓発や家庭・地域との連携の在り方について、保護者への説明のポイントなどを参考として例示している。

「事例編」で小・中・高の15の事例紹介

「第2編 事例編」では、ネットいじめに関し、学校における対応事例を、いじめの類型ごと、それをさらに小・中・高ごとに分け、以下のような15の事例の詳細な内容とポイントを掲載。

ある高校では、学校裏サイトの掲示板に、A子の個人名を挙げて「性的な逸脱行為をしている」など誹謗・中傷する内容の書き込み。A子にそのような事実はなく、書き込みを知ったA子は、保護者に相談することもできず、警察に被害届を出すこともためらい、生徒指導担当の教員に「学校に行きたくない、学校を辞めたい」と訴えてきた。

学校は、書き込みの削除要請を行うため、掲示板の管理者を特定しようと警察に相談したところ、ドメイン名登録情報検索サービス(Whois)を紹介され、それに基づき管理者の連絡先を入手。しかし、メールや電話による削除要請に応じてもらえず、再度、警察に相談したところ、サイト内にある掲示板の中に更に新たな掲示板を立ち上げたものだということが判明。そこで、新たな管理者の連絡先を入手し、学校長名でFAXやメールによる削除要請をした結果、個人が特定できる記事のみようやく削除することができた。

学校では、事案発覚後直ちに全校集会を開いて指導することも考えたが、書き込みの内容や掲示板の存在を新たに知る生徒が出ることを懸念し、掲示板での誹謗・中傷の書き込みが削除されるのを待って全校集会を開いた。

文部科学省では、マニュアル・事例集を8万部作成。全国の国公私立の全小中高・特別支援学校に、教育委員会を通じて各校2部ずつ配布する。

ネットいじめの実態についてはこちらのレポートを参照

【レポート】想像を超えた"ネットいじめ"の世界に絶句… - 学校裏サイト対策講座が実施