訪問先はダンロップコーナーの10番ポスト
続いては、いよいよ各自分かれてのポスト体験。実際に現場のコース委員の方々の仕事ぶりを見学させてもらったり、話を聞いたりできる寸法だ。そして、フラッグを振らせてもらったり、コースを清掃させてもらったりと、コース委員の仕事を体験でき、体験会のヤマ場といえよう。なお、撮影のモデルとして、新潟からお姉さんの明子さんと一緒に参加したという井上牧子さんにご協力いただくことになった。姉妹でトヨタ、中でもTOM'Sのファンで、関谷正徳監督が現役時代から応援しているというファン歴の長いおふたりである。訪問先は、ダンロップコーナー手前の10番ポストだ。各ポストは、そのポストの責任者のポスト長と、コース委員複数名で構成される。この日は下位カテゴリーのレースのため各ポスト当たりの人数が少なく、10番ポストは、ポスト長とコース委員2名の3名体制で運営されていた。
しかし10番ポスト、実は富士スピードウェイの中でも1コーナーの2番ポストと並んで多忙な部署だったりする。レースを見慣れている人ならご存知かと思うが、最もアクシデントが起きるのが、1コーナーとダンロップコーナーなのだ。そのため、新人はまずここの担当にはならない。アクシデントや違反が多いため、ポスト長は管制室への報告でかかりっきりになることも珍しくなく、そのためコース委員には自らの判断でミスなく適切なフラッグを振れる能力が求められるのだ。しかも、ダンロップはコーナー名こそひとつだが、実際には3つの連続したタイトなコーナー。そのため、手前の進入からダンロップの立ち上がりまでと監視ポイントが多く、広い視野を持っていないとならない点も経験が必要な理由だ。
ちなみに、富士スピードウェイはリニューアルしてからすっかり安全になったそうだが、旧コースでは隣の9番ポストなどは、それこそ命がけだったと、25年のキャリアを持つポスト長の方が話してくれた。9番ポストは、2メートル先を時速200km/hでマシンが全開で駆け抜けていったそうで、音量を全開にしても、管制室からの指示が聞こえなかったという。時にはコースアウトしたマシンがポストの真下に突っ込んでくるようなこともあり、地震に見舞われたようになったことも。さらに、タイヤが弾いたサンドトラップの小石がまるでショットガンの弾丸のように跳んできて窓ガラスを割るなど、危険極まりない場所だったのである。
コース清掃だけでも結構大変
今回は旗振りに関しては、忙しくて重要な10番ポストということもあり、参加者の井上さんに優先してもらったが、コース清掃はほうきが何本もあるので記者も体験させてもらった。テレビなどで見ると、狭い雰囲気のあるダンロップだが、思った以上に幅がある。なおかつ、両隣のポストとはそれぞれ200メートルずつぐらいの間隔があり、清掃する担当範囲は結構ある。
ただし、この日は完全なウェットコンディションだったこと、下位カテゴリーのレースだったこともあって、まだ路面は掃除しやすく楽だった模様。これが夏場のトップカテゴリーのレースとなるとラバーが乗ってベタベタになり、結構歩きづらいらしい。そんなベタベタの路面で小石などを掃くにはコツがいるそうだが、今回は素人でも普通の要領で掃くことができた。少しはコース清掃の役目を果たせたはずである。しかし、それでも筆者は日頃の運動不足がたたって、何回目かの時に左腰に違和感が(汗)。ギックリ腰ではなかったが、左腰の筋肉に鈍痛が走ってしまい、危うく自分が救急委員に担ぎ出されかねないところであった(苦笑)。また、コース清掃に夢中になっていると、意外と危険。この日のようにタイトなスケジュール(富士チャンピオンレースはカートからAE111クラスまで6レースあり、それぞれ予選・決勝が行なわれる)だと、ひとつのレースが終わってあっという間に次のレースのクルマがコースインとなり、邪魔になってしまいかねないので注意が必要だ。