完成したばかりの電車に乗ろう
次の大型イベントは会場の奥。完成したばかりのE233系電車に体験乗車できるのだ。こちらも大人気で長蛇の列。そこで待っている人たち曰く、「去年までの何年かは山手線の電車が続いていて、ちょっと飽きてしまった」。ところが今年は最新型の京浜東北線ということで、昨年よりも希望者が多いとのことだ。ぜひ乗らねばと一瞬思ったが、「いや待てよ。この電車、今朝、自宅の最寄り駅から東京駅まで乗ったぞ……」。
そう、新津車両製作所で製造される電車は東京に運ばれていくので、東京に住んでいる人にはおなじみの車両になる。しかし、新潟の人々にとってはとても珍しい。今日は地元の"名産品"に乗れる「年に一度の機会」というわけだ。なるほどね。これは人気のイベントになるのもよくわかる。ちなみに体験乗車では、工場の敷地内を約700m走行する。往復5分の小さな旅だ。電車は珍しくなくても、この試乗コースは貴重な体験だった。
ところで、できたての電車は微かに"新車のにおい"がする。それを係員に言うと、昔はもっと臭いが強かったとのこと。住宅建材の刺激臭が問題になって以降、鉄道車両においても刺激臭のない接着剤や塗料を使うように配慮されているそうだ。そういえば最近、旅先でアンモニア消毒液の臭いをする車両に遭遇しなくなったな、と思う。
工場の一般公開というと、なんとなく「社会科の見学コース」と思う人もいるかもしれないが、新津車両製作所の場合は違う。仕事紹介をする趣旨の展示実演も多いが、それと同じくらい遊べるイベントがたくさん用意されている。
まずは鉄道イベントでは定番のミニSL。ミニとはいっても、他所のライブスチームよりもひと回り大きい。新津車両製作所の職員が制作した車両で、大きさは実物の5分の1とのこと。かつては実際に石炭を燃やして走ったそうだが、現在は環境に配慮して圧縮空気を注入して走らせている。圧縮空気をシリンダーに送って動かすため、本物そっくりの音を出して走るのだ。ミニ鉄道はもうひとつ。北門のそばにも敷設されていて、こちらはミニ新幹線が走っている。これも大きい。このようなミニ列車は車体に跨って座るタイプが多いけれど、ここでは箱の中に座るタイプである。新幹線のほうは周回コースで、手作りの高架線や踏み切りもある。
傑作の乗り物は「トラバーサー」だ。トラバーサーとは、車両を載せて平行移動し、隣の線路に移すための設備だ。新津車両製作所の中央に大きなトラバーサーが設置されており、普段は台車工場で完成した台車を載せて機体組立工場に搬入したり、機体組立工場で完成した車体を内装工場へ移動したりという用途に使う。一般公開日では、これに体験乗車ができる。内部はレールを敷いたゴンドラとなっていた。
もうひとつの愉快な乗り物は「新津せいさく君」だ。バッテリーカーに牽引されるトレーラーで、なんとE233系の中央線タイプの姿をしている。一般公開日にお客さんに楽しんでもらうために、職員が製作したとのこと。ちなみに「新津せいさく君」の運行ルートは300mほどだっただろうか。