同日14時25分の東京・羽田発沖縄・那覇行きが特別塗装機の第1便。筆者は偶然にも同便に搭乗したが、機内でもJALが東京招致のオフィシャルパートナーであり、同便が第1便であることがアナウンスされていた

日本航空(以下、JAL)は、2016年夏季オリンピック・パラリンピックの東京招致活動をサポートする特別塗装機の運航を2008年10月2日、開始した。その第1便就航に先立つ同日昼、羽田空港内で記者発表会が開かれた。

夏を熱くした北京オリンピック・パラリンピックの興奮がようやく落ち着き始め、スポーツ界はすでに次回2012年のロンドン五輪へ向けて動き出している。さらに、東京招致が話題となっている2016年大会の開催地は、2009年の10月2日に決定される予定だ。


ご存じのように日本からは東京が立候補しており、最終選考でシカゴ(アメリカ)、リオデジャネイロ(ブラジル)、マドリード(スペイン)と開催地の座を争うことになった。そこで、東京オリンピック・パラリンピック招致委員会のオフィシャルパートナーであるJALは、開催地決定のちょうど1年前となる10月2日から、東京開催実現を広くアピールするために特別塗装機の運航をスタートさせたとしている。

JALはこれまでにも五輪関連の特別塗装機を就航させている。北京五輪の際も日本オリンピック委員会(JOC)のオフィシャルパートナーとして、日本のメダリスト7人の巨大な顔写真と「がんばれ! ニッポン! 」のメッセージが描かれた機体を運航。その強烈なインパクトに、空港で目撃して圧倒された人もきっと多いことだろう。

東京五輪招致のスローガン、「日本だから、できる。あたらしいオリンピック! 」の文字も機体に刻まれている

招致エンブレムは、スポーツと文化、都市と環境、子どもたちと未来、地球と平和……などさまざまなものを結ぶ「水引」のモチーフと、「TOKYO 2016」、「CANDIDATE CITY」(候補都市)の文字、そしてオリンピックシンボル(五輪)が組み合わされたもの

今回の特別塗装は、ボーイング767-300型の機体側面に、招致エンブレムと招致スローガン、そして青・黄・黒・緑・赤の5色の五輪カラーが描かれている。招致エンブレムは「TOKYO 2016 CANDIDATE CITY」の文字が入った招致ロゴに、水引と呼ばれる飾りひもがあしらわれたもの。招致スローガンは「日本だから、できる。あたらしいオリンピック! 」。顔写真がにぎやかだった北京仕様の機体と比べるとシンプルなイメージで、1964年の東京五輪時などの既存施設を活用し、環境負荷の低減も図ったコンパクトな大会をめざす東京のアドバンテージをアピールしている。

羽田空港・JAL整備ハンガー内に駐機する特別塗装のボーイング767-300型機。機体中央から後部にかけ、五輪カラーの5色がライン状にデザインされている

主催者挨拶に続いて壇上に立ち、子どもたちの未来に東京五輪開催が果たすであろう意義の大きさを語る、招致委員会副会長の谷川健次・東京都副知事

記者発表会は、羽田空港のJAL整備ハンガー(機体格納施設)内にて行われた。特別塗装されたボーイング767-300型機をバックに、まず主催者を代表して日本航空インターナショナル常務執行役員である大西誠氏の挨拶からスタート。続いて東京オリンピック・パラリンピック招致委員会副会長で東京都副知事の谷川健次氏が登壇し、「子どもたちの未来のために、夢と感動を与えたい」と、東京へ夏季五輪を招致する意義を語った。

両氏の挨拶後、特別塗装機前方のタラップ上から、ゲストとして元五輪出場選手の森末慎二氏(ロサンゼルス五輪体操個人金・銀メダリスト、体操団体銅メダリスト)と、城彰二氏(アトランタ五輪サッカー日本代表フォワード)が華々しく登場。二人は今回の東京招致において招致委員会から"ふるさと特使"という役割を委託され、日本各地で子どもたちと触れ合うなどして、東京開催をアピールする活動を展開している。ちなみに森末氏は出身地・岡山県代表の、城氏は生まれは北海道だが中学以降を過ごした鹿児島県代表のふるさと特使にそれぞれ任命されている。

タラップ上に特別塗装機機内から姿を現した、ロサンゼルス五輪体操金メダリストの森末慎二氏(右)とアトランタ五輪サッカー代表の城彰二氏(中央)

タラップを降りた二人はその後、大西氏をまじえてトークセッションを開始。司会者からは五輪に関するさまざまな質問が投げかけられた。

特別塗装機を前にして、森末、城両氏に日本航空・大西誠氏をまじえて行われたトークセッションの様子

森末氏は、五輪に出ることの大変さと、それを見ることで得られる感動を力説しつつ、東京に五輪を招致する意義について熱くコメント。招致スローガンを引用し、「五輪というイベントのあり方はどんどんと変わっていきますが、その動きの中にあって『日本だから、できる。』という部分を強調したい」と語った。また、ふるさと特使として子どもたちに直接語りかけられることをすばらしい機会だとしたうえで、「今の若い人たちは感動を知らないですから、最高レベルのスポーツを目の前で直接見ることで、感動を体験してほしいですね」と東京五輪実現への期待を膨らませた。

オリンピックの想い出や苦労談などを笑顔で語る森末氏と城氏。二人は東京オリンピック招致のふるさと大使として全国で活動を展開している

一方の城氏は、グループリーグで強豪ブラジルを撃破したアトランタ五輪の"マイアミの奇跡"などにまつわる五輪の想い出や、その際に感じたサポーターの重要性、さらには五輪で得られる経済効果の大きさにも触れ、「五輪自体の感動はもちろんですが、そのあとの、子どもたちの未来にもつながっていくような五輪を期待したい」と話し、東京大会開催の実現に込める思いを強くアピールした。

今回の特別塗装機は、同日14時25分羽田発の那覇行きを第1便として、羽田=小松、松山線、大阪(関西)=札幌、那覇線などの国内線に就航。開催地最終決定の2009年10月2日へ向け、空の上から東京への招致活動をサポートしていく。

トークを終え、最後に行われたフォトセッション。1年後、これよりさらにパワーアップした笑顔が見られることを期待したい