ジェーンに感情移入して見る東京の景色は新鮮!

普通ハリウッド映画というと舞台はニューヨークだったりラスベガスだったり、とにかく日本でないことがほとんどなので、見ていて「あ、この道、知ってるわ」なんてことはめったにないと思います。

しかし本作の舞台となるのは、ほぼ全編にわたって東京。聞こえてくる会話はもちろん日本語。住んでいる我々としては、別に珍しくもない景色のはずです。

……はずなのですが、なぜか映る景色が新鮮に思えてしょうがない。

これは、僕たち観客が、主人公であるジェーンの目を通して東京を見ているからだと思うのですよ。

たとえば、物語がある程度進み、良い感じに観客が主人公夫婦に感情移入してきたところで、妻のジェーンが一人で東京を観光するシーンがあります。

おなじみの電車内の風景ですら、日本語を話せないジェーン視点だと危なっかしくて仕方ない

竹下通りに迷い込んだジェーンは、あふれんばかりの人波に目を白黒させながら、すれ違ったゴスロリ少女を見てさらにびっくり(何の予備知識もなしに見たら確かに驚くだろうなあ)。

または地下鉄の路線マップを見て呆然とする(ニューヨークも複雑だと思うけど東京の路線図は初見殺しだと思う)など、もう僕たちは慣れてしまった光景なのに、改めてジェーンのフィルターを通して見るととても面白くて新鮮です。

とにかく東京はいろいろとややこしすぎる街なんだということを改めて実感

おどろおどろしい本編の箸休めに、ぜひ住み慣れた日本を俯瞰で眺めてみてください。

居酒屋ではちゃんと「カンパーイ」と言う彼ら

奥菜恵の美しさと、迫真の演技に恐怖せよ!

先ほどもちらっと触れましたが、本作で観客と主人公夫婦を恐怖のどん底に叩き込む役目を担っているのが、奥菜恵演じる謎の美女"メグミ"。いわゆる貞子的ポジションです。

貞子とはまた違った雰囲気のメグミ

普通の映画なら、大画面で奥菜恵のきれいな顔が見られてラッキー! ……ぐらいなもんですが、今回は奥菜恵の演技がとてつもなく迫力があって恐ろしい。

台詞こそ少なめですが、表情と雰囲気だけで十分怖いので、奥菜恵ファンもそうでない人もぜひ堪能してください。というかあれだけ整った顔立ちだと逆に現実味がなくて、だから余計に怖いのかもしれませんね。

とはいうものの、怖さは人それぞれなので、ぶるぶる震えている僕のような客がいる一方で、「別に……」と腕組みして呟いてしまう、そんな恐怖耐性の高い人もいることでしょう。それはそれで仕方ないので、そういう人は奥菜恵七変化として楽しんでください。実際、今回の恐怖演出にはアメリカンテイストが入っているので、「まったく怖くない」とか「むしろ笑ってまうわ」という人もいると思うんですよね。

そんな奥菜恵がどんな風に登場するのかは映画を見てのお楽しみなわけですが、とりあえずスピリチュアル・フォトがテーマということもあって、ちょろちょろ写真に写りこんできたり、気づいたら背後に立っていたりするので、こっちとしては心休まる暇がありません。

奥菜恵がいつの間にか自分の部屋に……なんか違う意味でドキドキしそうだ

……ま、でも実際に奥菜恵が背後に立っていたら、それはそれでちょっと僕は喜んでしまうかもしれませんが。

二転三転する事態! 意外な真実! 衝撃の結末を見逃すな!

本作を見ていると、どうしても奥菜恵の恐ろしさに目を奪われがちですが、実はこの『シャッター』は、謎解き物としての側面も持ち合わせています。"メグミ"がなぜ主人公夫婦の前に姿を見せるのか、目的は何なのか、といったところは物語のキーになる部分なので、ぜひ各自想像をめぐらせながらご覧ください。

写真だらけの部屋でジェーンは何を見た?

特にラストシーンは圧巻で、それまで謎だった部分がひとつにつながり、一気に天地がひっくり返されるような衝撃を味わえることと思います。

そこに至るまでに「終わりかな? でもなんかモヤッとしたままだなあ」という場面があるのですが、決して気を抜かないように。スタッフロールまでトイレは我慢だ!

新婚夫婦を待ち受ける恐ろしい運命とは……

……あと、どうでもいいのですが、主人公夫婦が勝手に人の家をウロウロするシーンが気になって仕方なかったです。あれどうなんだろ……? アメリカじゃよくあることなのかな? 僕はそういうしょうもないところが最後まで気になってましたので、よかったらそこらへんもチェックしてみてね!