さて、ここからはいよいよ各商品の解説に入る。それぞれの味わいが一目でわかるよう、レーダーチャートを入れているが、商品比較に関しては最終ページにあるチャートを参考にしてもらいたい。

※市場予想価格は、特に表記のない場合、350ml缶の価格を表記

サントリー

「ザ・プレミアム・モルツ」

市場予想価格249円(8月現在)

ビール界に「プレミアム」というカテゴリを確立した立役者。サントリーの看板商品であった「モルツ」に"ザ・プレミアム"をつけた商品名。「モルツより高級」と一般消費者にもわかりやすいネーミングとなっている。従来のモルツからの「麦芽100%、天然水100%」というこだわりはそのままに、さらにホップを通常の2倍量使用したり、あらゆる最適化技術を採用したりとビール界に革新をもたらした。

ソムリエコメント
色はゴールデンイエロー。クリ-ミーな泡。口に入れた瞬間は強い苦味を感じるが、実は奥の方に鈍い酸が隠れていることにしばらく経ってから気付く。そして、その酸は苦味とともに長く口の中にとどまる。それほど強烈ではないものの「モルツ」の名にふさわしくモルトの香りがほんのり漂う。柔らかな甘味はベースとして常に口の中にあり、余韻が十分楽しめる。

サッポロビール

「エビスビール」

市場予想価格250円前後

まだビールに"プレミアム"という言葉が使われるはるか前の1971年から(正確にはこの年に復活、最初に発売されたのは1890年! )、自社のビールも含めて他のビールとは一線を画する商品として販売されてきた。厳選されたアロマホップと長期熟成という、素材と製法にとことんこだわったビールで、日本のプレミアムビールの元祖といっても過言ではないだろう。

ソムリエコメント
色は輝くゴールデンイエローで、モルトの香りが豊か。ドイツ・バイエルン産ホップの使用でしっかりした苦味があるが、くっきりシャープな酸もかなり際立っていて"苦味と酸味の共存"が見事。甘さもあるが、苦味と酸味が前面に出ているためさほど感じない。さらに、炭酸が強めなのでコクや旨味がありながらも杯はすすむ。

「エビス」

市場予想価格250円前後

缶の色はホップを髣髴とさせる鮮やかなライトグリーン。今更ではあるが、ホップというのはビール特有のほろ苦さと香りを出す重要な役割を果たしている。この商品では、ホップから生まれる爽やかな香りにこだわって、ドイツ・バイエルン産アロマホップに加え、チェコ・ザーツ産ファインアロマホップも使用。

ソムリエコメント
ゴールデンイエローのボディ。やはり最初はモルトの香ばしい香りがくる。ホップが2種類入っているからといって苦さが際立つというわけはなく、「『エビスビール』に比べて、幾分穏やかな苦さになってるかな」という印象。「エビスビール」より酸は強くないが、甘味はこちらのほうが感じられる。この甘さが口の中でふんわりと残り、余韻が楽しめる。

「エビス」

市場予想価格250円前後

その色ゆえ、その商品名ゆえ、そのまま「黒ビール」とカテゴライズされるが、同じ黒ビールでもこの後に紹介する「ギネス」とは製法が違う。ギネスは麦汁ができあがった後にローストした大麦を投入、色を付けるのに対し、こちらは麦汁をつくる際に予めローストしておいた麦芽を使用、最初から色の黒い麦汁にする。これにより、麦汁を煮る温度と時間を調整する技術を要するが、その分ロースト麦芽ならではの甘味と香りが引き出されている。

ソムリエコメント
ブラックコーヒーのような濃い褐色。バニラのような甘い香りが特徴的で、旨味成分を凝縮させたような香りも。確かにロースト麦芽の香ばしさとほろ苦さはあるが、かなりきっちりした酸味も感じられるので、もったり感はなくスムーズに入ってくる。香りのイメージほど甘さは強くない。

「ギネス」

市場予想価格290円前後(330ml缶)

皆さんご存知、アイルランドが世界に誇る黒ビール。アイルランド以外の国でも製造しているが、日本では製造されていないためサッポロビールが輸入している。1759年にアーサー・ギネスによって誕生したこのビールの特徴は2つ。まずは、言わずもがなの色。これは、通常のビール製造工程の途中、煮沸の際に深煎りローストの大麦を投入(麦芽ではない)するからである。もう1つは「サージング」と呼ばれる注いだときに下からズンズンと泡が上昇する様子。パブなどで生のギネスを経験した人ならお分かりかと思うが、これがギネスの特許「フローティング・ウィジェット」と呼ばれる缶の中にあるちょっとした仕掛けによって、缶でも同様の様を見ることができる。缶の中にはピンポンボールのようなプラスチック製の隠し玉「ウィジェット」が入っており、このおかげでパブで飲んだときのようなクリーミーな泡が出てくる。

ソムリエコメント
「フローティング・ウィジェット」の影響からか、缶を開けた時の音が違う。"プシュッ"ではなく"カシャッ"と乾いた音がする。色は限りなく黒に近い褐色。香りは挽き立てのコーヒー豆やカラメルのように甘い。しかし、色や香りに反して意外にライト。苦味も酸味もきっちりあるのだが、二酸化炭素由来のピチピチした泡ではないのでスイスイと飲める。他のビールよりカロリー低めなのも嬉しい!?

「エーデルピルス」

市場予想価格260円前後

一部の限られた飲食店でしか飲めない業務用専用商品で、樽生のみの販売だったが多くのビールファンからは絶大な支持を得ていた「エーデルピルス」。7月16日、数量限定ではあるが、缶で家庭用商品として発売された。エーデルピルスの"ピルス"はチェコの典型的なタイプのビール「ピルスナー」からとったもので、「ほろ苦く、でもキレはいい」という点が特徴。そのチェコのザーツ産ホップを贅沢に使い、十分な熟成期間をおくことで上質な苦味を香りを表現した。

ソムリエコメント
色は今回の他のビールに比べると若干淡いめのゴールデン。注いでみるとキメの細かい泡が美しい。モルトの香りがふんわりと、実際飲んでもまずはその旨味が感じられるが、その後すぐにご自慢のザーツ産ホップ効果で苦味が口いっぱいに広がる。後のほうでシャープな酸味も感じるが、口の中は終始苦味で支配されている。ただいつまでもダラダラと残る苦さではなく、スッっと切れる感じが心地いい。