この夏の話題作の1つ、アニメ映画『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』が全国で公開となった2日、都内の劇場にて押井守監督らによる初日舞台挨拶が行われた。第1回目上映後の熱気さめやらぬ中、キャラクターデザイン・作画監督の西尾鉄也、草薙水素役の菊地凛子、函南優一役の加瀬亮、そして押井守監督がステージに登場した。

『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』初日、劇場は満員御礼

4年ぶりとなる押井守監督作品は、森博嗣の同名小説が原作となっている。幾たびかの大戦を経て、完全な平和が実現した"架空の現代"を舞台に、人々が求めた「ショーとしての戦争」の中でパイロットとして生きる"キルドレ"と呼ばれる子どもたちの姿が描かれている。原作を読んで、架空の世界ながら「現代性に満ちて」いると評した押井監督が、「僕は今、若い人たちに伝えたいことがある」と、新たな意気込みで取り組んだという。

キャラクターデザイン・作画監督は『イノセンス』でも作画監督を務めた西尾鉄也、音楽は押井作品に外せない川井憲次。また、脚本は行定勲監督作品を中心に活躍する若手の伊藤ちひろ、数カ月もの検討を重ねたキャストには菊地凛子と加瀬亮など、これまでの押井作品を支えてきたベテランスタッフに加え、新しい才能にも注目したい作品となっている。

まずは初日を迎えた感想を踏まえて、登壇者から挨拶が述べられた。

西尾鉄也「春には実質的な作業を終えて、今日の日を首を長くして待っていました。大勢の人に観てもらえて、感無量です」

加瀬亮「朝早くから多くの方に来ていただいて、うれしく思っています。素敵な作品に出させていただいて、光栄でした」

菊地凛子「自分にとっては、力が入り、苦労した作品でもありますが、多くのことを学ばせていただきました」

押井守「悪夢のような長いキャンペーンが終わって、やっと家に帰れるという……(笑)。今までの僕の作品と比べると、らしくないという話も出ていますが、生まれ変わった気持ちで創りました」

製作発表において「ヒットしなかったら辞める」と発言したという監督は、「これで成功しなかったらホントに辞めますので、辞めさせたくなかったらご協力ください」と自らをフォロー。

公開日を迎え、押井監督のテレビ出演ラッシュもやっと終了。押井「もうテレビは出ないから」

続いてキャストを務めた2人が、この映画の世界観について感想を尋ねられた。

加瀬「最初に台本を読んだときに、今生きている中で言葉にならない"気分"のようなものをよく掴んでいる感じで、スゴい作品だと。押井監督は、ズゴいことを考えるなと思いました」
菊地「虚構を描いているのに、とても現実世界を表現している。いろんなメッセージが含まれていて、多くのことを考えさせられた作品です」

同作は、第65回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門の正式出品作品に選出された。さらに司会者が来週の8月8日は押井監督の誕生日であることを述べると、会場からは二重のお祝いで大きな拍手が湧いた。

司会「オリンピックと同様、日本代表として目指すは金獅子賞ですね。いかがですか、監督」
押井「……。狙うと言っても、やることは無いですし。向こうの都合でくれるかくれないかだから、観念して行くしかない。カンヌの例があるので今度こそは、というのはありますけど……」

ヴェネチアの街が好きなので、行けるのは嬉しいという押井監督。加瀬や菊地も同行する予定とのことで、「前回(カンヌ国際映画祭)はとにかく石川(光久プロデューサー)とか鈴木敏夫(プロデューサー)とか、全然絵にならなかったけど、今回のレッドカーペットは絵になるんじゃないかと。そこだけは頑張ってきます」と会場の笑いを誘っていた。

加瀬「何年か前に作品を持って行ったときに、コテンパンにやられたので、今回はリベンジに行きたいと思います」
菊地「旅行気分で行けたらいいなと思っていたんですけど、そう甘くないような気がしてきました」

と、映画祭出席について尋ねられた2人も、それぞれに緊張感をにじませていた。

最後に、これから映画を観る人に向けてメッセージが述べられた。

菊地「多くの方に観てもらえる作品になるよう、願っています。何か持ち帰って、家族や友達に紹介してもらえたらと思います。ありがとうございました」
加瀬「押井監督がいろんなことを越えて創った、素晴らしい映画だと思います。監督を辞めさせないで欲しいと、心から願っています。多くの人に勧めていただきたいと思います」
西尾「2年間の、多くのスタッフの汗と涙の結晶の映画です。面白かった人は2度3度、イマイチだった人は面白くなるまで観ていただき、夏休みを『スカイ・クロラ』漬けで過ごしていただきたいです」
押井「映画は観ただけでなく、語られることで映画として成立すると思っています。映画について誰と何を語るかで、真価が決まるのではないかと。今回はそれを特に感じています。大事な誰かと語っていただければ幸いです」

ヴェネチア国際映画祭での活躍を願うパネルを持って