女王に手渡された優勝杯は、九谷焼の世界に新風を吹き込んだと名高い名工、人間国宝の三代徳田八十吉の手になる彩釉磁器製。徳田八十吉ならではの鮮やかな群青色が見事だ。さらに、優勝賞金500万円も贈られた。繰り返しになるが、女流棋戦ではかつてない最高額である。さらに、副賞の数々、就位状の授与などがいつ果てることなくつづく。女王の栄誉の大きさをあらためて思い知らされた。

優勝杯を手に喜びと決意を語る矢内女王

人間国宝徳田八十吉作の九谷焼の優勝杯。独特の群青色が美しい

謝辞を述べるためマイクの前に立った矢内女王は、「注目度が高く、画期的な棋戦であるマイナビ女子オープンで戦えることをほんとうに楽しみにしていた」と語った。どの対局も思い出に残るが、中でも陣屋での決勝五番勝負第1局はとくに忘れられないという。「数々の名勝負が行なわれてきた歴史ある陣屋で対局でき、しかも女流棋士として初めてということで、うれしく身の引き締まる思いでした」

しっかりとしたスピーチは、女王の風格を感じさせる

こんな豪華なドレスやティアラをつけることは二度とないのではを場内の笑いを誘う

また「すべて後輩との戦いで、精神的に鍛えられた」という矢内女王は、「それほど女流棋士の層が厚くなった中で女王になれたことは光栄だ」と話す。だが、女王の心はすでに第2期の戦いに向かっているようだ。「このような席を設けていただき、二度と着ることがないような素晴らしいドレスを着て、ウキウキしているが、この気持ちも今日いっぱい。会場を出るまで」ときっぱりとした決意で謝辞を結んだ。

こんなウキウキした気持ちは、今日限りと早くも第2期への意欲を見せる

女王の艶姿には、取材陣だけでなく、女流棋士仲間も盛んにシャッターを切る

乾杯の挨拶に立ったのは、テレビでも大活躍中の脳科学者・茂木健一郎氏。矢内女王と対談したこともある茂木氏は、矢内女王の根性を絶賛した上で、「戦う女性の時代が来ている」と語った。「社会のあらゆる階層で、戦う女性の時代が来るよう、矢内女王のいる将棋界がひとつの象徴となってほしい」と結んで、乾杯の音頭をとった。

賞金は女流棋戦としては最高額の500万円。使い道はまだ考えていないという

「戦う女の時代が来た」と矢内女王を評した、脳科学者の茂木健一郎氏

矢内女王はジュースで乾杯

多くの将棋界関係者、報道関係者が押しかけた会場は熱気に包まれた