若いころ多少ヤンチャしてても、そのうち仕事をもって家族ができると、いつしかさえないオッサンになって、ちょっと反抗期入った娘の前で寒ーいギャグを飛ばしては、腹の底から軽蔑される毎日。今さらノーフューチャーな日々に戻る根性はないけど、ちょっとワルな冒険してみたい、なーんて思ってるご同輩、結構多いんじゃないだろうか? そんな夢を現実にしようと無謀な一歩を踏み出したオヤジたちの物語、それが『団塊ボーイズ』だ。

主人公は4人のオッサン。一人をのぞいては家族をもって、皆そこそこの生活をしているが、いろんな意味で煮詰まっている。そんなオヤジたちのストレス発散の場といえば、週末にそれぞれご自慢のアメリカンバイクで集まり、つるんで走ること。気分だけは「イージーライダー」だ。そして実際はもちろんかなりのヘタレライダーで、看板にぶつかってバイクだけ走っていったり(修理代いくらかかってんだ?!)、無理して怖そうなライダーが集うバーに乗り込んでは、ビビリながらビールを飲んでいる始末。見ててハラハラする。作中に「昔はワイルドだったぜ!」みたいなセリフも出てくるが、怪しいもんだ。

バイクを楽しむ仲良しオッサン4人組。「もう無理……」みたいな顔してる人が若干1名

4人組のリーダー格、ウディを演じるのはジョン・トラボルタ。さすがにこの人だけはライダー姿がキマっている。ウディの幼なじみで、お腹のお肉が気になる歯科医ダグ役にティム・アレン――オイラの中では『ギャラクシー・クエスト』のタガード船長だよ! そして『バッド・ボーイズ』のマーティン・ローレンス。この映画では恐妻家の配管工ボビーを演じる。最後に『ジュラシック・パークIII』の頼りない富豪役が印象深いウィリアム・H・メイシー。この映画でもやっぱり頼りないオタクのITエンジニア、ダドリーを演じている。

この映画の原題『WILD HOGS』とは、主人公4人組が着ているお揃いの皮ジャンの背中にデカデカと貼ってあるロゴから来ている。一応彼らのチーム名だ。コレをそのまま訳すと「野ブタ」ってことになるけど、HOGには「役立たずのブタ」(by 小沢真珠)みたいな意味もあるそうな。「タダのぐうたらオヤジと思うなよ!」といったニュアンスも含むワケでなかなか深い。これがなんで『団塊ボーイズ』なんてタイトルになるの?!

それはともかく、物語はトラボルタ演じるウディが、奥さんに逃げられた上に仕事で失敗して破産したことから動き出す。ヤケを起こしたウディは、(自分が切羽詰まったことは秘密にして)ほかの3人を誘ってバイクでアメリカ横断ツーリングに行こうと提案する。誘われた3人はそこまで破綻しているわけではないのだが、みんな「プチ家出」的なノリでつい話に乗ってしまう。こうしてヘボいオヤジの無謀なバイクトリップが始まった。計画も地図もなく、ただ西海岸を目指すだけだから無事で済むわけがない。信じられない不始末からテントと寝袋を燃やすわ、ゲイの警官に追いかけられるわと散々。それにしても、アチラではいい年こいたオヤジが並んで寝てたり、スッポンポンで水浴びしてる=ゲイというのが共通認識なのね(笑)。

寝袋から覗く靴下を履いた足に哀愁が…。左からウディ(ジョン・トラボルタ)、ダドリー(ウィリアム・H・メイシー)、ダグ(ティム・アレン)、ボビー(マーティン・ローレンス)

あげくの果てに、とうとうホンモノのハイウェイギャングに目をつけられ、全面闘争に発展してしまう。相手の暴走族のリーダーを演じるのがレイ・リオッタ。この人「饒舌なワル」をやらせると上手いね。ちなみに人気ゲーム『Grand Theft Auto: Vice City』の主人公のボイスも担当。4人 vs. 屈強な暴走族50人! はたしてこの絶体絶命のピンチを切り抜けることができるのか? というのが見どころなんだろうけど、あんまり緊迫感はなくて、むしろほのぼの感すら覚える。とにかく敵も味方もみんなアバウト! 結構ひどい目に遭ってもすぐ忘れるし……。アメリカ人がこんな人ばかりなら、世界はもっと平和なんだろうなあ。

まるでコント

最後にちょいネタバレを。

クライマックスでどこかで聞いたような歌とともに登場するのが、元祖イージーライダーのピーター・フォンダ! 結局おいしいところ全部もって行っちゃうのだが、これはしょうがない。4人組に"Ride hard or stay home!"と言い捨ててバイクに乗って去っていくところは、マジカッコいいです。

『団塊ボーイズ』は2月9日(土)より新宿バルト9 他全国ロードショー。

(c)2006 TOUCHSTONE PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.