愛を100%

笑いのシーンは多いが、タイトル通り本作は"命を賭けた愛"がテーマだという。

「これまでに、僕はいろんな愛情を失ってきました。仕事を通じて仲間も出来たけど、やればやるほど、どんどん孤独にもなって行った。ここで映画製作やあらゆる事に対して『ラブデス』で決意表明しないといけないと思った。「愛が勝つ。愛が全てだろう」と。日本では生ぬるい恋愛映画が流行ってるけど、僕が撮るからには命賭けた愛じゃないと意味がない。"愛のために死ぬ、愛のために殺す"と言う事を100%やろうと決めた」

『ラブデス』には愛に関するアイコンとして、ミュージシャンの大友康平とKANが重要な役で出演している。

「『ラブデス』の事を考えていて、ハウンド・ドッグに《愛が全てさ~》って歌あったよなあと思ってたら、その日に携帯が鳴り、友人が大友康平のスタッフになったと……。すごい偶然でしょ? もう次の日には大友さんと会って出演してもらえる事になった。愛に生きるヤクザの若頭の役で、劇中で歌まで歌ってもらいましたからね。『愛は勝つ』のKANさんにしてもそう。あの音楽の才能と姿勢を、僕は本当にリスペクトしていたから、口説いて出演してもらったんです」

主演の無名女優NorAの凄さ

大物俳優、ミュージシャン、それに格闘家たち。こういった豪華な出演陣にも関わらず、主演女優は無名の新人NorA。北村監督やNorAに不安はなかったのだろうか。

「ある意味自分やNorAへの試練ですよ。芝居したことない20歳の娘。彼女がこの豪華キャストと渡り合える存在じゃないとこの映画は成立しない。企画した僕も負けです。それが、完璧に出来たから、やはり彼女は凄いと思った。彼女自身もまったくビビッてなかったし、そのままハリウッドデビューも決まりましたからね」

NorA演じるシーラ。サイだけでなく、ヤクザも刑事もみんな彼女に狂う。まさにファム・ファタールだ
(C)2007「LOVEDEATH」製作委員会

この『ラブデス』のNorAを観た『ミッドナイト・ミートトレイン(原題)』のプロデューサーが彼女を絶賛。NorAは急遽『ミッドナイト・ミートトレイン』へ出演し、現在はジム・キャリーなども所属するハリウッドの大手マネージメント会社と契約している。もちろん、北村監督自身も完成した『ラブデス』に最高の自信と愛情を持っている。

「ラブデスを他の奴に作られたら引退する」

「『ラブデス』は日本でもハリウッドでも、メジャーじゃできない、自主映画でしか出来ない作品。この豪華キャストでこんなブッ飛んだ映画は、僕にしか作れない。これを作れたことで、まだ『自分は大丈夫」だと思えた。また5年後くらいにこんな無茶な事をやると思いますね。ハリウッドスター連れて来て、脳みそ出させるぐらいの事を(笑)。僕はつねに最新作が最高傑作じゃなければいけないと思っている。現時点で『ラブデス』が僕の全てで最高作。ブっちぎりの自己ベスト。僕の映画を観てくれている人には勿論だし、これまで観ていない人にも、観て欲しいのはこの『ラブデス』しかない。こんなに沢山人が死ぬにもかかわらず、無茶苦茶に笑えて、元気になれる映画。こんな映画は他にないし、これに北村龍平の全てが出てます。僕は僕以外の人間がこの映画を作って、僕に見せる日が来たら引退します。そんなヤツには勝てないから。本当に全てのルールを破壊して作った映画。現時点で生涯愛して止まない映画です」

2時間ドラマの帝王・船越英一郎もこのはじけっぷり。バイブレータ型の拳銃でヤクザの常識すらも破壊する組長クロガネ
(C)2007「LOVEDEATH」製作委員会

この映画で北村監督は新たな自分を見つけたようだ。

「自分でも自分の作品じゃないみたいな感じですね。『ゴジラ~』までの自分のイメージすら破壊したと思います。全編ギャグ満載ですし。『ミッドナイト~』のプロデューサーに見せたら「すげえ、これはロックオペラだ!」と言ってくれて。ハリウッドでこれからやっていくのに、大きな自信になりましたね」