――そういうこともありつつ、いろんな役者さんの声を演じてこられたと思うんですが、中でも印象的な役者さんのお話をうかがえますか。

「実は二枚目半から純粋な二枚目までいろいろやっておりますけれども、どっちかっていうと僕は、二枚目半のほうが後々、ディレクターから『また、ご一緒しましょう』って言われることのほうが多いですね。その二枚目半の一番最初は、ダニーケイ、ディーン・マーチンですね。もう、ご存知ない方もいるかな。ディーン・マーチンって言ってもジンマシンだと思われたりして(笑)。あと、『クロコダイル・ダンディー』のポール・ホーガンとか、それから『ピンク・パンサー』のピーター・セラーズ。ピーター・セラーズが亡くなって、すぐ『バックマン家の人々』なんかをやったスティーブ・マーティンが『ピンク・パンサー』の新作をやりましたけれども、これも二枚目半。『コンバット!』のジャック・ホーガンも、どっちかっていうと二枚目半ですね。あと『俺がハマーだ!』っていうのもありましたけども、主演のデビッド・ラッシュっていうのが、もう三枚目近いもの」

――なるほど、二枚目半が多いですね。

「ところが、結構二枚目もやってまして、恐ろしいことに(笑)。ポール・ニューマン。引退を宣言いたしました、つい最近。あの『雨に濡れても』の曲で有名な『明日に向かって撃て!』。ロバート・レッドフォードと共演した。最後にボリビアの兵隊に撃たれて死ぬというね」

――最後、撃ちまくられて……。

「撃ちまくられてね、最後。ストップ・モーションで。あれ、大二枚目ですね。悪い犯罪者なのに、観客は『悲しい、惜しい、死なせたくない』と言うのが大半の反応」

――そのほかに二枚目では、どんな役者さんをおやりになられましたか。

「それからどっちかっていうと、『特攻野郎Aチーム』のジョージ・ペパードっていうのもこの『特攻野郎Aチーム』になったら、二枚目半になりましたね。あと、ロック・ハドソンとかね、ジェームズ・カーンとか、ご存知ないかもしれないけど。『ディア・ハンター』の恐ろしげなクリストファー・ウォーケンなどもやっています。中でも大二枚目は、『ロッキー』のシルベスター・スタローンであります」

――出ました!

「私の今の声、聴いていただくとわかると思いますけど、『あんな声じゃないよ、スタローンは』。その通りであります。彼、胴間声(どうまごえ: 濁った太い声)なんですね。イタリアの種馬ですからね(笑)」

――その胴間声は、どのようにして演じられたんですか?

「自分の声を変革させなきゃいけないんで、トレーニングをするんですね。トレーニングして、トーンをどんどんと下に落としていって作っていくわけです。浄瑠璃を海に向かって、3日間ぐらいやるんですよ。これをやってると、3日目ぐらいに低い声になるんです。まあ、自己満足なんですけど、トーンを下げてそれで演じるという」

――キャスティングなさった方は、どんな理由で羽佐間さんを起用されたのでしょう。

「このスタローンが、なぜ私にキャスティングされたのか、未だに不明なんですね。キャスティングした方がお亡くなりになられたから聞けないんです。想像ですが、きっと困っちゃったんだと思うんですよ、プロデューサーが。『どうしようかなー』と思って、こう何人かの俳優を紙に書いて並べて、サイコロぱらっと転がして止まったところで『羽佐間道夫か、しょうがねえな。じゃあ羽佐間にするか』っていう。なんだかそう思わせるような(笑)」