年をとったとは思わない。明日はもっと素敵になれるから

テレビや映画の俳優、ドキュメンタリー番組のナレーションなども務めてはいるが、世良の軸足は常に音楽にあった。詞を書き、メロディを作り、ギターをかき鳴らし、歌声をしぼり出す……。30年間変わらぬ創作意欲というのは、どこから生まれてくるのだろうか?

「20代の頃は、例えばローリングストーンズが倒れるまで俺は倒れないぞ! という思いがあったけど(笑)、今にしてみれば、たまたまギター弾いて30年経ってしまった。もちろん映画は好きだし、役者として演じたり、ナレーションの仕事でその人の人生を語ることで勉強したこともたくさんある。音楽を続けるにはいろいろな思いや条件があるかもしれないけど、今まで続けてこられたのは俺の力ではなくて、音楽の力ですよ」

中学校からギターを弾き始めた世良。勉強のために30分間鉛筆を握ると指が痛くなったのに、ギターのピックなら30分どころか朝まで持つことができた。数学の問題を解くと頭が痛くなったのに、歌の歌詞を聴き取るのは少しも苦ではなかった。もちろんプロになった後、ソロになった後にはさまざまな苦悩があり、試行錯誤もあった。

「大掛かりなバンドを引き連れて、俺は世良だ! かっこ良く見せるぜ! とか勘違いしていた時期もありますよ。でもスタッフに、そんなパフォーマンスは感動がないと言われた(苦笑)。ギターを弾きすぎて肩を壊したこともあって、それでもライブを1本も飛ばさずにやったときには、ああ、腕が普通に動いてギターが弾けるというのはすごいなーと思ったし。その頃は確かにしんどかったけど、いろんなことに気がついたね」

そして今、世良はGUILD9のメンバーという盟友を得て、彼らとのプレイがとても面白いと言う。音楽について熱く語る姿に、今年で52歳を迎えるという年齢は感じさせない。音楽に年齢は関係ないと言わんばかりに。

「年をとったとは思わないね。そりゃあ20代だったら、とりあえず容姿が良ければ歌は二の次と言われるかもしれないけど(笑)。若い頃より今の俺のほうがかっこいいと言われるには、身体の細胞の変化も全部受け止めたうえで、音楽をやる姿勢をどう出すか? 俺は音楽屋だから。要するに、ギターを弾くパワーが落ちても味でカバーしようとか、今の自分を素敵にしていくことでしか、51という年齢は語れない。51の世良は良かったよね、でも次の52の世良は違う意味で元気がいいよねとか、明日のほうがもっと素敵になれる。だって、まだやっていないことがたくさんあるから」

自分を信じ、明日を信じる。世良はもう次のアプローチを見据えている。皆さんも、まずはCDに収められたGUILD9のエネルギーを感じ取ってみてほしい。そして、彼らの生のライブをぜひ体感することをお薦めする。

(写真:黒田彰)

世良公則 プロフィール

1955年、広島県生まれ。高校時代からバンド活動を始め、1977年に「あんたのバラード」で第14回ポプコングランプリと第8回世界歌謡祭グランプリを獲得。同年、世良公則&ツイストを結成し、レコードデビュー。「宿無し」、「銃爪」、「燃えろいい女」などをヒットさせるも、1981年に解散。その後はソロボーカリストで活動を続け、2001年にGUILD9を結成。そのほかアコースティックユニットや、国内外の数多くのミュージシャンたちとのセッションにも積極的に参加している。また、テレビや映画での俳優、ナレーターとしても活躍中。

『WE ARE GUILD9!』
六本木WAVEレコーズ/XNRW-10001/3,000円
収録曲
1.ゼッタイ・フューチャー 2.UNDER DOGS 3.BORN TO BE ROCKIN' 4.1977 5.僕という存在の理由 6.ボクを許さないで 7.GOODTIME, SHOWTIME 8.NIGHT WORKER 9.NOBODY KNOWS 10.ソ・シ・テ・ボクハ…眠リニ堕チテユク 11.銃爪 12.宿無し 13.NEWS 14.美しい月 15.あんたのバラード

ライブスケジュール

日程 場所・時間 問い合わせ先
9/6 渋谷CLUB QUATTRO 03-5436-9600
9/15 太田市民会館 0276-45-8291
9/30 藤岡町文化会館 0282-62-4321