録音をやり直したい気持ちを抑えるのが大変だった

ちなみにバンド名のGUILDとは「職人の組織」という意味。普通なら時間がなくて神経質になってしまうような状況だが、逆に余裕さえ感じられる。それはミュージシャンとしての経験の深さはもちろん、メンバー全員が世良を信頼し、GUILD9の音楽を楽しんでいることが大きい。

「野村君なんてすごいですよ。小さなギターアンプを3つ持ってきて『これを直列にして鳴らしていいですか? どんな音がするか、前からやってみたかったんです』だって(笑)。そういういろいろな発想が出てくるし。基本的には各楽器の音作りは各自に任せているんですけど、俺の趣味嗜好はだいたいみんな分かっている。例えば、ベースドラムの皮を少しゆるめてくれる? とか、ギターのエフェクターを1個減らしてみてくれる? とか、ひとこと言うと、あ、何が欲しいんだろう、何か違う音を作ろうって、みんなすぐに反応してくれるんです」

ただ1つ、今回大変だったのが、やはり「演奏をやり直したくなる気持ちを抑えること」だったという。

「もう1回やろうと言いたいところを、OKと言う勇気かな。以前だったら徹夜してでも録り直していただろうけど、今回はそういうコンセプトではなかった。この5人があの2日間に出した音が、このアルバムのサウンド。もし違う2日間だったら、またサウンドは違っていたはずだし、そこはライブと同じだね。だから今回、アルバムタイトルも迷わなかった。タイトルは? と聞かれたときに、俺たちはギルドナイン、WE ARE GUILD9だよねって言ったら、メンバーもスタッフもみんな、そりゃそうだ、それ以外ないですよって言ったの(笑)」

さて今回、初回出荷分には特典としてDVD『GUILD9/REC.07'』が付いている。「銃爪」 と「ゼッタイ・フューチャー」の2曲に、スタジオなどでのオフショット映像も加わっているのだが、実はこの映像は世良自らが編集したものだ。しかも、Macに付属している『iMovie』という映像編集ソフトを使用し、自宅のiMacで作ってしまったというから驚きだ。

「プロ用ソフトではないので、自分でカウント取りながらクリップを合わせていって。それでも口の動きや、ギターを弾く手の動きが合っているのには驚いた(笑)。ビデオカメラもスタッフが1人で撮っていますから、それしか素材がない。そういう映像を集めて、誰もが持っている『iMovie』で編集しているという面白さはありますね」

世良が映像編集を楽しむようになったきっかけは、2003年にロサンゼルスで現地アーティストたちと行なったライブ。すごくいい出会いだったと感じたので、その思い出として、プライベートで撮ったビデオや写真を編集した約1時間のDVDをプレゼントしたところ、とても喜んでもらえた。その後も「みんなが喜んでくれるのなら」と、ことあるごとにDVDを作ってはプレゼントしているという。