このDVDリリースを記念して、ジャッキー・チェンと声優の石丸博也氏からメッセージが届いた。まずはジャッキーの『酔拳』に対する思い入れと、映画製作にかける情熱をご堪能あれ。

笑顔のジャッキー

「『酔拳』は僕にとって代表作のひとつ。本当に大切な作品だ」

――今回の日本語吹替版と吹替を担当されている石丸博也さんについて、聞かせてください

「以前、石丸さんがいるアフレコスタジオに行ったことがあるんだ。ずいぶん前だから、どの作品かは忘れてしまったけどね。彼がずっと僕の声をあてているのは、もちろん知っているよ。彼は僕の表情までうまく吹替えてくれてると思う。今後も、彼に僕の声をあててもらいたいな。他の人に代えたりしたら合わなくなると思うからね。彼の吹替を聞いたら、誰もが気に入るはずだよ」

――『酔拳』に出演した理由や、きっかけは何だったのでしょうか?

「僕も最初は『酔拳』に出演するとは思ってなかったんだ。あの頃は、以前契約していた会社で、僕の望む映画ではない映画に出ていてね。すべて監督の言いなりだった。あの頃は、『蛇鶴八拳』や『少林寺木人拳』を撮ってて、スタッフもみんな若かったからいろいろ悩んで試行錯誤していた。それで、いろいろな拳法をやったんだ。『五形拳』や『蛇拳』なんかもね。『蛇拳』が注目されたおかげで、次の『酔拳』が撮れたんだ」

1979年の日本公開当時、「コマ撮り撮影しているのでは?」と噂されてしまうほど、ジャッキーのアクションはシャープだった

――『酔拳』は酔っぱらった演技が有名ですが

「そうだね。あの作品のために、色々したよ。劇中同様、毎日お酒を飲んで、ずっとほろ酔い状態でいようとしたんだ。演技もきっとよくなると思ってね。皆が撮影のセッティングをしてる時に、少し飲んで、また飲んで、人がいなくなったらまた飲んで、夜食のあとにね。酒はすぐに酔わず、徐々に来るだろ? 本当にほろ酔い状態で酔拳を撮りたかったんだけど、それはできなかったよ。都合よくほろ酔いにはなれないね」

――『酔拳』撮影当時と今を比較すると、映画撮影現場はどう違いますか?

「今は世話をしてくれる人が大勢いるけど、当時は一人もいなくて、自分で現場に行ってたね。そして1日に、70~80カットも撮るんだ。それもすごく暑い日にね。急いで撮って、カット。そしてすぐに撮り直し……。全身汗だくだったよ。それでも、みんなが寝しずまってから、一人ホテルで、拳法のポーズをどう綺麗に見せるかを考えていた。別に人を殺すわけじゃないから、酔拳の動きにダンスを取り入れたんだ。ブルース・リーとは全く違うスタイルにしたかったんだ。喜劇の中で、武術の演技をどう見せるかを真剣に考えて、あのポーズは本当に自分で頑張って作ったんだ。振り返ってみると、「今頑張れば30年後に大スターになれる」と言われたら頑張るけど、当時は将来なんて考えてなかった。ただこの映画を良くすることしか考えてなかったよ。大変だったけど、"大変だった"なんて今だから言えるんだ。苦労には代償がある。僕はその苦労で今日の地位を手に入れたんだ。あの時あんなに頑張った自分を褒めてあげたいよ」

修行のシーンもとってもコミカルなのです。それにしてもジャッキーは長髪も似合います

――ジャッキーさんにとって『酔拳』は大切な作品なんですね

「そう。僕にとって『酔拳』は、世界に名を知ってもらうチャンスをくれた作品。でもこれから初めて『酔拳』を観る人には、現代の目線だけで見てほしくない。当時としては斬新で貴重な映画だし、僕の代表作のひとつと言えるしね」

――ジャッキーさんが考える"理想的な俳優像"とは?

「良いアクション俳優である以外にも、良いコメディアンであり、良い演技をする役者だと証明したい。最終的には万能な俳優になる。万能な俳優は少ない。万能な俳優は、喜劇も悲劇も、喜怒哀楽すべて演じられる。監督も脚本も編集もできる。自分で社長もやれる。ずいぶん昔に、自分を奇跡だと思った。多くのアクション俳優の中でまだ生き残ってる。タイトルも自由に決められて、何でも自分でできる。だから僕は幸運だと思う」

――最後に、ジャッキーさんの映画に対する対する思いを聞かせてください

「僕は映画製作にとにかくすべてを捧げている。僕にもし誰かが10万ドルくれたら、僕は50万ドルの価値の映画を撮ってみせる。僕はそういう人間だ。映画を撮りながら自分のものを人にあげてるような状態なんだ。僕は映画を愛してるから。その気持ちがあるから僕の映画は成功するんだ。どの映画にも心血を注ぎ、自分の命まで注ぎ込むからね。僕はどんな事も映画のためにやるんだ」

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これが証拠写真だ!

声優・石丸氏が語るジャッキー吹き替え苦労譚

また、日本におけるジャッキー・チェンのイメージを確立させた声優の石丸博也氏からも、今回のDVD化に寄せてコメントを頂いた。

「ジャッキー作品全般にも言えることなんですが、とにかく立ち回りが非常に多くて、長い作品だと思いました。立ち回りが多いと、息遣いも全て入れなくてはいけないので、それがとても大変なんです。他の作品の場合、オリジナルの息遣いをそのまま使用することがあるのですが、彼の作品は、ほぼ僕が入れなくてはいけなかったので、非常に苦労しました。アテレコの時には、頭や首にもハチマキをして汗だくになって演じています。彼の作品のアテレコは、体力が無いとできません。正にスポーツのようです。こんな状態で作業をしいているとは誰も思っていないんじゃないかな。毎回、毛細血管が切れそうになるんですよ」(石丸博也)