――当時は、音楽を担当されていらした越部信義さんが、各話ごとにいちいち音楽をつけてらっしゃったそうですが。

「そうですね。当時『みなしごハッチ』もそうでした。画面を観て、それで小オーケストラ編成が組んであって、シーンごとに音楽をつけていくんですよ。あんな贅沢なこと、もう今はやれないでしょうね」

――後の作品では、1クール、2クールごとに、まとめてなんとかのテーマみたいなのを作って、使い回すようになりますね。

「何曲か作りましてね。それであと、選曲して……」

――当時、夢中になって観ていた子どもの一人として、マッハ号のかっこいい特殊装備についてうかがいたいんですけれども、どのような経緯で、ああいうものを出そうということになったんでしょうか。

「当時は冒険的なものだとか、いろいろなものがありましたから。『車のアクションに当然なっていくんだろう』と思っていましたが、『それだけじゃちょっと魅力ないな』と思いまして。それとね、もともとアメリカへ売るということで、そうしないと制作費が出ない。日本だけでは赤字なんですね。で、あるときは『ひょっとしてオモチャにもなればいい』と。それをみんな制作費につぎ込むわけですよ、もうけじゃなくて。そういうことも考えながらね。それと暴力的な描写について、アメリカでは子どもたちの教育のこともあり、うるさかったですね。今でもそうでしょうけれども。それで一切武器は持たないと、持たしちゃいけないんだと。そういうお話は、アニメの場合はダメだということになっていましたから。ちょっとでもバイオレンスがあって採用されないと困るんで。『どうしようかな』と思ったときに、七つ道具というものを利用して、何か困難なときに小道具としてね。チョッパーも逃げたりするときに、木を切ったり。それからあのマスコットのギズモ号。そんなの武器にしようと思ったらなるわけですよ。だけど主人公の機転で、殺傷はしないんだけども、なんかの危機を乗り越えるために……例えば、悪い相手の銃なり武器を振り落とすとか、アクション道具にもなるんじゃないか、ということで考えたものなんです」

――水には潜れるは、ぬかるみは走れるは、木は切り倒すは、さらに宙は舞うは、という……(笑)。

「(笑)」

――あれはやっぱり、皆さんでお考えになったんですか。

「ええ、それはもう、みんなで考えました」

――ちゃんと、きれいにアルファベットでAからGまで頭文字が……。

「ええ、あれもみんなで考えて。A、B、Cって、当てはまる文字をね。あの七つ道具のボタンというのは、ちょうど輪にするときれいな円形の絵なんですよ(笑)」

――『マッハGoGoGo』は、後にアメリカに輸出されて、『Speed Racer』というタイトルで、大変な人気になりましたが……。

「我々も驚きましたけれど、あれは私たちが考えた仕掛けなんですね。要するにアメリカを研究して、そういう構成も結果的には憧れだったんですけど。それがアメリカで受け入れられた。絵柄も僕なんかは特にアメリカのコミックを見てたし、それが功を奏したんじゃないかと思います。日本から留学している人たちだとかが向こうで目にするわけですよ、『マッハGoGoGo』を。ですが、日本の作品だと思わなかったらしいですよ。ほとんどの人がね(笑)」