この連載では、『シリコンバレー式最強の育て方 - 人材マネジメントの新しい常識1on1ミーティング-』(かんき出版)の著者で、1on1の第一人者である世古詞一さんより、「部下との距離の縮め方」についてお答えいただきます。

今回は上司との対話に価値を感じない部下への接し方を解説してもらいます。

  • 上司の話に価値を感じない部下に困っていませんか?(写真:マイナビニュース)

    上司の話に価値を感じない部下に困っていませんか?

Q.上司との対話が有意義なものに思えない

上司との対話の時間に、あまり良いイメージを持っていない部下がいます。本人には、その行為に価値を感じなかったということです。

数年前、組織開発分野で「EX」(エンプロイーエクスペリエンス/従業員体験)という概念が注目されました。

EXとは、従業員が会社の中で働くことを通して得るすべての経験のこと。入社後、年次ごとに良いものにしていき、従業員エンゲージメントを高めましょうというものです。

上司と部下の対話における体験も同じように熟考され、設計されなければなりません。 そこで、対話の場において、部下が良い体験をしていくためのヒントを紹介します。

部下と対話する時に意識するべき3つのポイント

体験を最高のものにしていくために考えることは、(部下の)期待値を確認しておくことです。期待値を超えれば良い体験。下回れば悪い体験になるからです。

ですので、そもそも部下が対話の場にどんなことを期待するのか? 期待していないことは何か? を知ることが重要。

そのためにも、対話を始める初期の頃は、この対話の場をどんな時間にしていきたいか? 自体をテーマにして進めていくことは非常に有意義です。

部下の期待を明確化する

そこでまず一つ目に対話すべきは「期待(目的やゴール)の明確化」となります。上司との対話において、部下にどんな期待があるかを引き出したり、すり合わせたりしていきます。

例えば、以下のようなことをチェックしてみてください(部下から見たとき)。

□業務で困っていることなどの相談
□業務のフィードバックが欲しい
□どうすれば評価されるのか確認したい
□キャリアについて考えたい
□部署の方針の背景の説明など確認したい

部下にとってのNG行為を把握する

二つ目は「期待に反している言動のチェック」です。部下の期待していないことをしてしまっては意味がないので、これを知る必要があります。

しかし、これは人によって異なります。なぜならコミュニケーションにおいて、その言動が良いか悪いかの正解は相手が持っているので、AさんにしてOKなことが、Bさんにはアウトなことがあります。

二人の関係性や個々人の性格やキャラクター、業務の習熟度や組織への適合感などさまざまな要素を加味して、部下の期待を裏切る言動、つまりNGな言動は何か? を知って避ける必要があります。

ですので、対話が必要なのです。しかし、いきなり聞きづらいこともあると思いますので、まずは自分でチェックして気を付けてみましょう。

そして、どこか話せるタイミングで以下のことも話し合って確認していくことをお勧めします。(部下から見たとき)

□上司がしゃべり過ぎている
□過度にプライベートなことを聞かれる
□新しいチャレンジを強要される
□雑談ばかりで意味を感じられない
□形式的であり、自分を見てくれている感じがしない

部下に誠実に向き合う

最後は「1on1で決まったことを履行する」です。

1on1後、部下から預かった相談や確認事項を上司が放置する、部下本人がやると決めたアクションをまったく手を付けないなど、決まり事をなあなあにすると、上司との対話の場が軽いもの、意味のない重要ではない体験となり、その価値が損なわれます。

対話が終わった後、上司は部下に試されていると思ってください。ミーティングで部下が話したことを受けて、上司が自分のために動いてくれたなら、部下からの信頼は非常に高まります。

さらに、それが些細なことであるほど、物事のためではなく、部下のために動いてくれたという印象は強くなり、信頼はさらに強固なものになるでしょう。


部下にとっての対話の良質な体験とは、実は対話が終わった後の上司の行動でさらに素晴らしいものになっていくのです。

世古詞一(せこ・のりかず)

株式会社サーバントコーチ代表取締役
早稲田大学政治経済学部卒。組織人事コンサルタント。1on1ミーティングで組織変革を行う1on1マネジメントの専門家。近著に『シリコンバレー式最強の育て方」- 人材マネジメントの新しい常識 1on1ミーティング-』(かんき出版)がある。