宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業(MHI)は6月8日、H3ロケット6号機(30形態試験機)の打ち上げ前ブリーフィングを開催し、最新状況を説明した。6月10日に予定していた打ち上げは既報の通り、天候の悪化が予想されるため、延期が決定。新たな打ち上げ日は未定だが、今のところ、12日となる可能性が高い。

  • 6月8日14時からオンライン開催された打ち上げ前ブリーフィングに出席したH3ロケットプロジェクトマネージャ。右がJAXAの有田誠氏、左がMHIの北山治氏だ

    6月8日14時からオンライン開催された打ち上げ前ブリーフィングに出席したH3ロケットプロジェクトマネージャ。右がJAXAの有田誠氏、左がMHIの北山治氏だ

現地レポート1本目に書いたように、天候の悪化で延期になるのは想定通りだったのだが、予想外だったのは、同日朝にフィリピン付近で発生した地震に伴い発表された津波注意報だった。ただ、これについてJAXAの有田誠・H3ロケットプロジェクトマネージャは、「設備や作業に何か影響が出ているという報告は受けていない」とし、特に問題はなかったようだ。

  • 種子島宇宙センターは海沿いにあるが、射場の敷地にはそこそこの高さがある(7日に撮影した写真)

    種子島宇宙センターは海沿いにあるが、射場の敷地にはそこそこの高さがある(7日に撮影した写真)

同ロケットは、6月5日に最終機能点検、7日にRFシステム点検・リハーサルを終えており、8日のアーミング/クローズアウト作業が完了すれば、あとは9日19時30分に機体移動を実施する予定だった。今回、打ち上げが延期になったため、機体移動もそのまま打ち上げ前日へスライドすることになる。

  • H3ロケット6号機の準備状況 (C)JAXA

    H3ロケット6号機の準備状況 (C)JAXA

気になるのは打ち上げ日がいつになるかということだが、この日に発表された最新の天気予報を見ると、12日の改善傾向がさらに高まっており、有田プロマネも「ここをひとつの目標にしたい」と述べた。なお、打ち上げ日が変更になった場合でも、今回の打ち上げ時刻は9時53分59秒のままで変わらないそうだ。

  • JAXAが6月8日に発表した天気予報 (C)JAXA

    JAXAが6月8日に発表した天気予報 (C)JAXA

ロケットの打ち上げには、風(地上/高層)、雨、雲(積乱雲/雲底高度)、雷などに対し、それぞれ制約条件が設けられている。10日の打ち上げで問題となったのは、このうちの雷と雲底高度だった。上空に厚い氷結層を含む雲があり、飛行中に落雷の恐れがあるほか、雲底高度も450mを下回る可能性が高かった。

ちなみに、30形態は最初の加速が小さいため、打ち上げ直後の風に弱い可能性が指摘されていたが、詳細に検討を行ったところ、20.0m/s(最大瞬間風速)まで耐えられることが分かったという。これは、ほかの22形態や24形態と同じ数字であり、気象関係の制約条件について、30形態が特に弱いということではなくなった。

  • 打ち上げの制約条件 (C)JAXA

    打ち上げの制約条件 (C)JAXA

今回の打ち上げで、H3ロケットのラインナップがいよいよ出そろう。30形態は、その中では最も低コストという位置づけだ。

今後、商業打ち上げの獲得を狙っていくMHIの北山治・H3ロケットプロジェクトマネージャは、「海外の主戦場は22形態と24形態になると考えているが、30形態も引き合いがある」とした上で、「3つの形態がそろって、顧客のニーズにぴったり合うものを提案していけるようになったのは大きい」と意義を述べた。

このコストについてだが、今回、有田プロマネから、より踏み込んだ発言があった。30形態に対するコストは、22形態が2割増し、24形態が6割増しになるとのこと。機体のコンフィギュレーションの違いから計算すると、メインエンジン「LE-9」、固体ロケットブースタ「SRB-3」、それ以外のコスト比率は、ざっくり1:1:2であることが分かる。

とはいえ、2回の失敗で打ち上げが止まった影響もあり、H3ロケットはあと数年は、政府衛星の打ち上げだけで手一杯。積極的に商業衛星を打ち上げられる状況ではなく、まずは政府衛星の打ち上げを手堅く進めつつ、信頼性の高さをアピールしていく必要がある。今回の打ち上げが成功すれば、その第一歩になるはずだ。

  • まずは天候の回復を期待したい。こちらは6月8日の種子島宇宙センターの様子(撮影:大貫剛氏)

    まずは天候の回復を期待したい。こちらは6月8日の種子島宇宙センターの様子(撮影:大貫剛氏)