宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業(MHI)は6月12日、H3ロケット6号機(30形態試験機)の打ち上げに成功した。今回は、固体ロケットブースタなしの30形態の初フライトだったが、シーケンスはほぼ予定通りの時刻で進行。第2段機体を、所定の軌道に投入することができたという。同ロケットの成功率は、これで75.0%まで回復した(8機中6機)。

  • 打ち上げに成功したH3ロケット6号機。液体エンジンのみでの飛行だった

    打ち上げに成功したH3ロケット6号機。液体エンジンのみでの飛行だった

6号機は、30形態の試験打ち上げと、H3ロケットの飛行再開という、2つの重要なミッションを担っていたが、今回、これを完璧に遂行。まだメインエンジン「LE-9」のタイプ2が開発中なものの、これで30形態、22形態、24形態という、ラインナップが完成したことになり、いよいよ本格的な運用体制がスタートする。

打ち上げ後に開催された記者会見で、JAXAの山川宏 理事長は、「皆様からいただいた多くの叱咤激励は、H3プロジェクト関係者一同が心をひとつにし、誇りと責任を持って取り組む原動力になった」とコメント。「日本の宇宙輸送システムがより着実で高い信頼性と国際競争力を発揮できるよう、気を引き締めて取り組んでいく」とした。

今後H3ロケットは、日本の自立性確保のための基幹ロケットとして政府衛星を着実に打ち上げつつ、商業打ち上げの獲得も狙っていく。MHIの江口雅之 防衛・宇宙セグメント長は、国際競争力について「最優先で取り組まないといけない」とし、目標とする“H-IIAの半額”について、「順調にコストダウンは進んでいる。方向性は見えてきた」と述べた。

  • JAXAの山川宏 理事長(右)と、MHIの江口雅之 防衛・宇宙セグメント長(左)

    JAXAの山川宏 理事長(右)と、MHIの江口雅之 防衛・宇宙セグメント長(左)

8号機の失敗から半年での飛行再開を果たしたJAXAの有田誠H3プロジェクトマネージャは、「短いようで長かった。みんなの努力でここまで来ることができて、その結果がきちんと形になった」と喜びのコメント。「まだ道半ばなところもあり、これからさらに頑張らないといけないが、今日は美味しいお酒を飲みたい」と、満面の笑顔を見せた。

MHIの北山治H3プロジェクトマネージャは、「この半年は厳しい期間だったが、6機の衛星を所定の軌道に届けられて、心から安堵している」とコメント。30形態の打ち上げを映像で見た感想については、「3つのエンジンのノズルの中が白く輝きながら上昇していった。これを見ることができたのはエンジニア冥利に尽きる」と、興奮を隠さなかった。

  • 機体が上昇していくと、ノズルの中の輝きがよく見えた

    機体が上昇していくと、ノズルの中の輝きがよく見えた

打ち上げ時の音については、現場の報道陣の中でも「大きかった」という声が多かった。両プロマネとも、打ち上げ時は指揮所に詰めており、直接は聞いていないものの、これについて、有田プロマネは「ゆっくり上昇するため、地上の近くにいる時間が長い」「比推力が高いエンジンの方が、理論的には騒音が大きい」と理由を推測した。

  • JAXAの有田誠H3プロジェクトマネージャ(右)と、MHIの北山治H3プロジェクトマネージャ(左)

    JAXAの有田誠H3プロジェクトマネージャ(右)と、MHIの北山治H3プロジェクトマネージャ(左)

ところで、JAXAの打ち上げ中継を見ると、リフトオフ後43秒〜44秒のあたりで、LE-9エンジン付近から何かが脱落したような様子が映っていた。これについて質問された有田プロマネは「我々も映像で確認している」と回答。エンジンを熱から保護している布状のサーマルブランケットがばたついて離脱した可能性があると述べた。

  • LE-9エンジンはジンバリングで根元から動くため、柔らかい布状のサーマルブランケット(銀色)で覆い、熱から保護している。ちなみにその下のノズルにも何か巻かれているが、これはフライト前に取り外されるので関係ない

    LE-9エンジンはジンバリングで根元から動くため、柔らかい布状のサーマルブランケット(銀色)で覆い、熱から保護している。ちなみにその下のノズルにも何か巻かれているが、これはフライト前に取り外されるので関係ない

ただ、詳細についてはこれから解析するものの、エンジンの燃焼時間はほぼ計画通りで、投入軌道もかなり精度が高かったことから、現時点では「エンジンの性能に影響を与えるような事象ではなかったと考えている」とした。

【動画】H3ロケット6号機(30形態試験機)打上げライブ中継 (JAXA公式YouTubeチャンネル) ※脱落時の当該箇所は55分20秒頃〜

今回の成功により、日本の基幹ロケットによる打ち上げがいよいよ再開される。次の打ち上げについて、正式な発表はまだないものの、準天頂衛星システム「みちびき7号機」になる可能性が高い。もともと、前年度の打ち上げが計画されており、8号機の失敗前には、続く9号機による2月1日の打ち上げが決まっていた。順番としては妥当だ。

2回の失敗により、H3ロケットは打ち上げるべき衛星が溜まっており、今後、どんどん打ち上げていく必要がある。

しかし、高頻度化への課題のひとつは、今回のように、天候理由の延期が多いことだ。H-IIA/B時代も含め、天候理由の延期で多いのは、氷結層の問題。今回もそれで1回延期になったものの、有田プロマネによれば、氷結層の厚さを計測する新しい手段を導入しており、打ち上げのチャンスを増やせるようにしたという。

また、打ち上げ後には損傷した射点設備を補修する期間が必要になるが、30形態はブースタがないため、ダメージが小さく、その分、高頻度化には有利にはたらく可能性がある。一方、ブースタがある形態についても、北山プロマネは「補修期間を短くできるような提案をしながら、JAXAとともに改善を図っているところ」と述べた。

  • 打ち上げ後の射点。移動発射台(ML5)の台車側はよく見えなかった

    打ち上げ後の射点。移動発射台(ML5)の台車側はよく見えなかった

なお、H3ロケット6号機には、相乗りで6機の超小型衛星が搭載されていた。これらの衛星は今回、全て計画通りに分離されており、前述の2つのミッションに加え、ロケットは完璧に役割を果たしたといえる。記者会見の最後には、衛星側の関係者も登壇。今のところ、衛星側から特に大きな問題は確認されておらず、今後、そちらの成果も期待したい。

  • 衛星側の関係者。それぞれが喜びのコメントを述べていた

    衛星側の関係者。それぞれが喜びのコメントを述べていた