2025年1月22日から23日まで東京ビッグサイトにて開催された「オートモーティブワールド 2025」で、STマイクロエレクトロニクスは、電気自動車(EV)に必要不可欠な車載半導体の数々を展示。車体やバッテリの制御・保全において鍵を握るさまざまな製品を紹介した。
EVの電気制御を司るMCU「Stellar」をデモ展示
今回STは、電気的制御を司る車載用マイコンを筆頭に、バッテリマネジメントシステム(BMS)を構成する新製品や、SiC(炭化ケイ素)パワーMOSFETなど、EVに関連するさまざまな半導体製品を紹介。ブースの一角では自動車のミニチュア模型が展示され、車体全体における電気制御の流れや半導体の役割を可視化しつつ、同社の車載用統合マイクロコントロールユニット(MCU)「Stellar」シリーズの製品デモンストレーションが行われた。
このデモでは、車内のあらゆる機能を物理的な位置に応じてゾーンコントロールユニット(ZCU)に分類し、それらをセントラルゲートウェイと通信させながら各機能の制御を行う方式が提示された。STのブース担当者によると、Stellarシリーズの強みの1つに、それぞれのZCUとセントラルゲートウェイをイーサネットで接続できることがあるとのこと。これにより、従来主に用いられていたCAN/LINなどの通信方式に比べて大容量のデータも伝送できるようになるうえ、車体全体におけるワイヤハーネスを大幅に削減できるといい、設計を容易にし軽量化にも貢献できるとしている。
新製品を搭載したバッテリマネジメントシステムを提案
またSTは、車載バッテリの状態モニタリングや制御を行う製品群として、「L9965x」第4世代製品を搭載したバッテリマネジメントソリューション(BMS)も展示。2024年後半から2025年1月にかけて相次いで発表された4つの新製品を紹介した。
バッテリセルそれぞれの電圧状態を監視するバッテリセルモニタリングIC「L9965A」は18セルまでに対応し、異常発生をいち早く検知する。担当者は、今後バッテリセルモニタリングICの対応セル数をさらに増やしていきたいといい、より多くのセル数への対応を求める日本市場のトレンドと、設計簡素化のために一定のバッテリセル数を求める欧州市場のトレンドの両方に応えるため、幅広い製品ラインナップを揃えることを目指すという。
また、電気的制御を行うマイコンが機能を失った際に電流をストップするためのHVパックモニター「L69965C」および電気の切断を行うヒューズドライバ「L9965P」は、バッテリジャンクションボックスとして併せて紹介。前出のStellarに、絶縁トランシーバ「L9965T」とMCU用パワーマネジメントIC「SPSA068」を組み合わせたバッテリマネジメントユニットも並び、統合的なBMSとしてEVのバッテリ効率向上に貢献するとした。
SiCモジュール搭載EVを手の届く選択肢にするために
さらにブース内では、STが材料から製品までの垂直統合生産を行うSiCモジュールを用いたソリューションも展示され、両面放熱SiCモジュールを搭載したトラクションインバータ、および巻線界磁式(EESM)モータ向けSiCトラクションインバータのリファレンスデザインが公開された。
担当者によると、これまでSiCを活用したモジュールは主にスポーツカーのようなハイエンド用途向けを中心に開発されており、一般市場で広く用いられうる状態には遠かったとのこと。しかし材料および製造技術の発展により、EESMモータのような一般的なユースケースへの対応も見えてきたといい、コスト面でも広く普及する可能性が見えてきたとしている。